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女性建築技術者の会編著「夢見る昭和語―少女たちの2000語」2017年 三省堂

 昭和30から40年代に少女時代を送った46人の女性が2000語をミニミニエッセイで綴る。「ちゃぶ台をひっくり返す」「大晦日の枕元」「お母ちゃんはどこ」「この指止まれ」などユニークな言葉が収蔵されていて「ウーン、そうそう」となつかしいし、「物をもらった時、その容器に入れて返すお礼」のことを「お移り」というとか新しい発見もあってたのしい。心がほっこりする。途中に「4畳半二間の暮らし」「田の字型の民家」などの設計図が入るのも特色である、
 でもしかし―
 たとえば「夕方」「夕ごはんまでの時間」「夕日」「夕焼け」といった言葉が出ている。「夕焼」の項目に「祖父が英語を話せたこともあり、わが家には立川基地の兵隊さんが時々遊びに来ました。二度と来ない兵隊さんもいて、母に聞くと朝鮮戦争で戦死したと教えてくれました。あの空の向こうでは戦争をしているのよと言われて、真っ赤な夕焼けがとても怖かったのを覚えています」とあるのだが、「基地」「朝鮮戦争」という項目の解説がない。もっと不思議なのは「指切りげんまん」の項目に「……『げんまん』にも意味があると知ったのは大人になってからです」とあるのに「げんまん」の説明がどこにもないこと。さらにびっくりなのは「メンス」は「生理のこと」とあるのだが、「生理」という項目がない。「生理用品」はあるのだが。辞典ではないのだからそんなことに目くじら立てるのはヤボかなあ。
 致命的と思うのは、「政治」「経済」「戦争」関係の項目は徹底して排除されていること。
 それがこの本の特徴といわれればそうなのだろうが、「裸の島」の映画の紹介があって映画「原爆の子」がないっておかしくないだろうか。
 「子どもの頃のことなので、家庭や学校生活などの日常生活の出来事が中心になっています」と「はしがき」にあるけれど、日常生活は政治や経済と無関係でありえないわけで、それを入れると範囲が広くなりすぎ総合年表のようになることを嫌ったせいかと思うのだが。
 「昭和」といっても甘いノスタルジックな時代はわずかで、どうしたってあの戦争のこと抜いては語れないのではないか。戦前・戦中をさておいたとしても「パンパン」「闇市」「焼け跡」「停電」(項目はあるのだが雷との関係しか書かれていない!?戦後の電力不足O停電のほうがずっと大規模で大変だった)「公害」「オイル・ショック」などなどマイナス面がまったくないので、上澄み液だけの薄甘い昭和という感じ。
 政治や経済問題でも少女の目からのとらえ方があるとおもうのだが。と、残念でならない。(巳)
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