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梶村太市「離婚調停ガイドブック」日本加除出版株式会社 03年1月

 離婚や相続など家事事件の研究者であり、ベテランの裁判官であった(現在横浜の公証人)著者が、離婚調停の手続・運営・離婚に関連する判例の考え方などをわかりやすくまとめた最新の書。主として調停委員に向けて書かれているが、家事審判官、調査官、弁護士等専門家のほか、知識欲旺盛な方なら調停の当事者が読んでもいい。調停への不安・不満も少なくないなか、裁判所の努力や考え方、調停委員の苦労や調停の力学もわかるし、積極的により良い話し合いの場を作り上げていく当事者に変わっていけるかもしれない。最近話題になっている「調停におけるジェンダーバイアス」についても触れられており、「夫は仕事で頑張っているんだから奥さんは少し我慢しなさいよ」等の「性別役割分業や性差別につながるような発言が許されないのは、今日的観点から見れば、むしろ常識となっているでしょう。今日において、もし人間的に成熟した者であれば、これらの発言が出ようはずがありません。」とある。出ようはずがないが、なくならない実情に対する警告のように聞こえる。DV防止法の出現によって少し調停に変化がおきているように思うが、その点に触れられていないのが残念。この本を読んで、最近出会ったすぐれた調停委員のことを思い出した。当事者にこびず、いばらず、担当裁判官にもこびずかつ謙虚で、勉強熱心で、紛争の本質をとらえて、当事者の長所をほめながら、当事者に本当に自分の為に説得してくれているのだとわかる方法と熱意で説得する。マイナス思考になり、出口のみえないブラックホールに入り込みがちな当事者を、プラス思考で何度も引っ張り出し明るい気持ちにさせてくれ、感動的ですらあった。調停委員自身が、努力をすれば実る、誠意は通じると確信を持っていたことが伝わってきた。年に約29万件の離婚、そのうち9%が調停離婚なので、年に約5万人以上の人が調停離婚していることになるが、すぐれた調停は離婚する大人にとって人生の学校になる。著者は「離婚の紛争解決機能を高め、4割台前半にすぎないその成立率をせめて5割台に乗せたい」と書いているが共感する。こうしたすぐれた文献や調停委員の努力によって、判決離婚はもっと調停離婚へ、充分な話し合いのない協議離婚はもっと調停離婚へと移動するといいなと思う。
 後半では、「調停条項の広範性と多様性」として、実際のさまざまな調停条項の例を紹介し、解説されているが、大変参考になる。判決では限られた「主文」しか得られないが、調停では自由である。こんな調停条項もできるのかと新鮮である。「養育費不請求の合意」のように、条項に書いてもよいが、子に対しては効力がないなど、微妙な問題もわかりやすく解説されている。3400円。

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