判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
歌集「一天四海」(比嘉美智子 短歌研究社 2005年)

 沖縄に生まれ育ち、いまも生活している著者ならではの歌集である。
  海に生れまた還りゆく生命ぞと青藍の雫 掌に置く
  潮鳴りはわが子守唄 無限なる旋律のする故里の海
 沖縄の美しい自然を歌った歌もいいのだが、幼児時代にみた戦火の沖縄、そしていまも米軍基地が島の要地を占め、軍機の騒音に悩まされ、基地独特の犯罪に市民生活が脅かされる沖縄を見つめた歌は、鋭いというよりも穏やかで深いものであるだけに読者が抵抗なく読むことが出来る。声高に「基地反対」を歌っているわけではないのだが、平和を希求するひたむきな心が素直に読むものに伝わってくる。
  ドーナツの円周の街回りゆく直径は通れぬ普天間の基地
  辺戸岬に立ちて怒りの島人は祖国を恋へり篝火焚きて
  壕となりし亀甲墓より見し大火わが八歳の十・十空襲
  「人間の鎖」は人の温もりを繋ぎて包囲す嘉手納の基地を
 家族詠や心情を吐露する歌がないのは、残念だが、これが歌風というものだろう。
 そのなかで、著者の職場の一つである家事調停に関する歌は、ユニークである。
  ブラインドを洩るる夕光に幼子の産毛光れり離婚する父母
  拠り所なんに求めむ離婚して独り立ちする六十路の妻は
Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK