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永原和子「近現代女性史論―家族・戦争・平和」吉川弘文館 2012年

 明治時代から現代まで、女性は家族や家庭のなかでどう生きてきたか、地域の中でどのように活動してきたのかについて考察することが本書のテーマである。そのなかでも母性という役割をどのように担ってきたかまた担わされてきたか、そしてその母性の名のもとに女性が戦争に組み込まれ、また身を投じていくに至ったかが鮮明に描かれている。
 戦力となる兵士を生み育てるために母体を利用したことはもちろん、優良な戦士に育てるために母親に一定の学問や科学的知識を要請した国家は、女子教育の振興を必要とした。また、軍需産業への女子労働力の動員、また戦地に赴いた男性労働力の補完をするために家庭の主婦も働くことを余儀なくしたために、生活の合理化・社会化が進み、一定の母性保護政策を実施したことなど、戦争政策の遂行のために生活の改善や女性の法的保護、地位の向上が実現した面があったことは否定できない、と著者は述べる。そして「戦争政策が一面では女性を家庭から解放し社会参加をうながし、女性のエネルギーをフルに活用しながらすすめられました。それが、疎外されてきた女性たちに生きがいを与え、婦人解放運動の活動家たちにこれも“女性解放か”という期待をだかせることになりました」。
 戦争と女性解放とのこのようなねじれた関係は必ずしも日本に限ったことではないだろうが、女性と戦争の関係を考えるときに落とせないポイントだろう。「女性兵士」の問題もあるいはここに含まれるのかもしれない。
 地域に関する論稿に私が長年住んでいる地域の活動が紹介されている。同じ時代に同じ地域に生き、同じ方向の関心を持っていたのにもかかわらず、まったく始めて知ることが多く愕然とした。私がぼんやりなのかあるいは活動する側の働きかけが少なさ過ぎるのか。地域組織の狭小さを示すものでなければいいのだか。
 著者はいったん家庭に入ってから女性史の研究を再開した。今年で85歳になる。次の世代に伝えたい思いが一杯に詰め込まれた本である。
 重いテーマがならんでいるが、研究書的に原文引用が多かったり、注だらけという書物ではないので読みやすい。(巳)
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