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近藤和子・大橋由香子編『福島原発事故と女たち―出会いをつなぐ』梨の木舎 2012年

 3.11から2年が過ぎようとしている。
 あの未曾有の大惨事の直後、避難生活の報道記事に「さすが東北、共同体の意識が強い、絆が固い」という言葉がたくさんあった。でもその陰で、我慢させられている人、抑圧されている人がいるのではないか、特に声高に物を言うことに慣れていない人々、女性や障害者の人々は別の苦しみもあるのではないか、とても気になった。
 時間が経つうちにそのような声も少しずつ聞こえるようになった。地震、津波、原発事故の被害者が当然のことながら決していつまでも一枚岩でないことがわかってきた。
 なかでも放射能被害をめぐっての人々の思いは複雑である。まさに現地に「留まるも地獄、出るのも地獄」だったのだ。
 私が幼い子どもを育てていたらどんな選択をできただろうか。西へ西へと逃げただろうか。「疲れている暇はない」とそのとき即座に判断する力と機動力があっただろうか。とどまって事実を見きわめ学び放射能測定器を買い、子どもを守るため自分たちを守るための積極的な運動に参加しただろうか。
 そのことを想像しただけで無力感に襲われ、この本さえ読むのが辛い。でも彼女たちは「静かに怒る東北の鬼」となって立ち上がり、「これ以上、奪われない、分断されない」と決意している。恐怖・不安・絶望のなかで女たちは何を考えどう行動してきたか。14人の体験を集めた本書のなかに、「障害を持つ人を見世物に恐怖を煽らないで」と自ら障害を抱えて生きている人が訴えているが、ともすれば陥りがちな反原発運動への警鐘となって胸に痛い。
 「しがらみ、なりゆき、あきらめの中での、一人ひとりの選択を大事にしたい」という大橋由香子の論稿はサブタイトルにあるように、「母性・フェミニズム・優生思想」の視点から3.11以後の状況をとらえ、今後の私たちに大きな示唆を与える優れたものである。(巳)
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