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ジェンダー法学会編『講座 ジェンダーと法 第4巻 ジェンダー法学が切り拓く展望』日本加除出版株式会社 2012年

 第4巻は「ジェンダー法学が切り拓く展望」と題して編集されている。本巻は、第1巻から第3巻までの検討内容をふまえて、今後の課題と展望を明らかにすることを目的とし、ジェンダー法学の有効性・可能性を問い直しながら、未来に向けて展望を拓くことをめざしている。すなわち、既存の学問領域での検討が十分でないために、今後のジェンダー法学にとって重要な課題となると考えられる主要な論点として、憲法上の人権論・平等論に関連する理論的課題、親密圏をめぐる理論上・実践上の課題、ジェンダー法学の担い手論が挙げられ、これを3つの部に分けて、各部ごとに様々な角度で分析がなされている。
 第T部「人権論と平等論―課題と展望」では、ジェンダー法学の根源的課題を憲法学や労働法学の視点から論じられている。第1章「人権主体と性差」(辻村みよ子)は、リプロダクティヴ・ライツを中心に、人権の本質と性差をめぐる理論的課題に迫るものであるが、生殖補助医療の推進、代理母問題、セックスワーカーの権利容認への賛否、性的自由・強姦罪のあり方に関する立場の違いについて、「人権論としてみた場合に、止揚が不可能な対抗であるかは検討の余地がある」と指摘して、「ジェンダー人権論」の確立を提唱しているが、非常に示唆に富む論考である。第4章「性的マイノリティと法制度」(谷口洋幸)は、法が性別二元論と異性愛主義を無前提に引き受けつつ、維持し、強化していることを具体的に論証しつつ、ジェンダー法学における性的マイノリティの主流化こそ、ジェンダー法学の新たな地平を切り拓く視点といえると締めくくっている。論者の「多様性の承認という言葉が、多数派や既得権者のもつ伝統的で一面的な価値観を無償のままに温存しつづけてしまう可能性があること」という意見に首肯しつつ、個人的に性的マイノリティとジェンダーの問題に関心があることもあり、今後の議論の発展が非常に楽しみである。
 第U部「親密圏をめぐる課題―DV・ハラスメント・家事労働」では、家族におけるカップル間や親子間の関係に注目して新たな親密圏の権利、また、DV、セクシュアル・ハラスメントの問題と課題が論じられている。さらに、第10章「逸失利益論」(吉田克己)は、親密圏で提供されるがゆえにアンペイド・ワークとして扱われる家事労働について、逸失利益の対象になるかどうか、対象になるとしてその理論的根拠は何かについて検討しており、実務的観点からも興味深い。また、正規就労女性が家事労働を負担している場合や、自己のための家事労働の評価については、考えさせられる論点であった。
 第V部「国家・市民社会の役割と連携―政策と主体形成」では、第1巻から第3巻まで内在的に検討してきたジェンダー法学という学問について、外在的で広範な視点から再検討するために、担い手の育成問題や連携の課題をテーマに論じられている。第11章「国際人権の展開とジェンダー平等政策の展望」(伊藤和子)において、著者が主張する「現場に身を置き、最も困難な立場にある女性が切実に求めている要求・潜在的要求や差し迫った課題に依拠」しつつ、理論的課題に取り組むという点は共感する。最後の第13章「ジェンダー法学研究の課題と主体形成」(松本克美)は、ジェンダー法学会の10年の活動をふまえて、日本におけるジェンダー法学教育の課題を明らかにしつつ、「担い手」の育成とグローバル化の課題を論じており、ジェンダー法学の発展への期待が高まる内容で最後がまとめられている。
 このように本巻は、既存の学問領域の枠を超えて、ジェンダー法学が今後の発展のために解明しなければならない理論上・学問上の課題や実務上の課題を広い範囲で検討しており、今回個別に紹介できなかった論考もそれぞれ新しい課題への学問的探究が鋭いものが多く、また、全体的にも内容がバラエティに富んでいる。第1巻から第3巻までもそうであるが、本巻も、ジェンダー法学に関わる方々はもちろん、多くの方に読んでいただきたい一冊である。(折井)
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