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ジェンダー法学会編『講座 ジェンダーと法 第2巻 固定された性役割からの解放』日本加除出版株式会社 2012年

 『第2巻 固定された性役割からの解放』は、労働(第T部)、家族(第U部)、福祉・税・政治改革(第V部)という生活に密着した問題を取り上げており、章ごとの切り口も面白く、興味を持って読み進められる巻である。
 第T部『労働−人間らしい働き方を求めて』では、2011年のデータに基づき、「男女労働者の平均勤続年数は、男性13.3年に対して女性は9.0年に過ぎない。コース別雇用制度において、総合職女性は6%しかいないが、一般職女性は78%を占める。管理職の女性比率はなかなか増加せず、民間企業の課長相当職の女性はたった8.1%である。第1子出産を機に退職する女性はなお6割を占めており、一般労働者の男性賃金を100とすれば女性は70.6にすぎない」など、相変わらずショッキングな現実が示される(第1章「はじめに」)。その上で、5人の筆者が、それぞれ異なる視点から、性差別の成否についての比較方法論を提案したり、立法の必要性を論じたり、アメリカでの家族法改正における問題点を紹介したりするなどして、男女格差の解消を模索している。個人的な話であるが、司法修習時代に、新聞社で数日間の研修をさせていただいた際、支店長より、「女性は子宮で物を考えるから、論理的ではなく無能。生理痛などがあるから新聞社でも使えないし、使いたくない。政治家も全員男性とすべきだ。云々」などと熱く語られ続けた苦痛の日々を思い出しつつ、一日も早く女性が性差別を受けることなく労働できる日が来ることを願いながら、各筆者の思いに共感しつつ頁をめくった。
 第U部『家族−多様なつながりの中で』では、婚姻、親子、相続についてジェンダーからの視点で議論がなされている。いずれも身近な問題であるし、各章には家族法の基本・重要事項も沢山盛り込まれているため、家族法の知識が乏しくとも興味を持って読み進められることは間違いない。また、法曹として家事実務にあたってこられた読者にとっても、各筆者の疑問提起や提案に首肯し、膝を打つ場面が幾度となくあるはずである。なお、元調停委員(満田康子氏)のコラムに、以前は男性の調停委員にペアの女性調停委員を蔑視する人が少なからず存在し、その後変化しつつあることが書かれているが、多くの弁護士の実感も同じであろう(以前ほどではなくとも、現在も、家事調停の場で女性蔑視を目の当たりにすることは度々あるが、女性調停委員の内心の苦労はいかばかりか・・・)。
 第V部『福祉・税・政治改革−新しい政策の創造』は、「介護の法政策とジェンダー」、「母子世帯と養育費」、「『少女支援』を考える」、「税法とジェンダー」、「『日本における政治参加』をジェンダーの視点で考える」の各章からなるが、見てのとおり、どれも心惹かれるタイトルである。そして、実際に大変面白い。確かに、介護の場面や母子世帯の生活には、ジェンダーの問題が色濃く見られ、早期対策の必要性を痛感させられる。「少女」が女性として、かつ子どもとして、二重に家族の中の暴力にさらされやすい存在でありながら、法制度の谷間に置かれてきたとの指摘も、なるほどと思わせられる。個人的には、「税法とジェンダー」の章や、「年金とジェンダー」のコラムは勉強になったし、参議院議員選挙に立候補の経験を持つ道あゆみ氏の論文も、なぜ日本の女性は政治に参加しないのかを分析し、政治参加を進める方策を提案したもので、説得力はさすがである。
 第T〜V部を通じて、上記のほか複数のコラムが載せられているが、いずれも読みやすくて面白いので、コラムも是非隅々まで読んでいただきたい。(渕)
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