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山本浩資『PTA、やらなきゃダメですか?』小学館新書 2016年

 PTA…。次年度役員が決まっていない2月、某中学PTA会長として、重苦しい響きがある言葉だ。本著のタイトルをみて、よろよろと手にし、一気に読まずにはいられなかった。
 「役員を押しつけられた」、「お手伝いを強要された」、「委員を断ると仲間外れにされた(←という実例はさすがに私の周囲ではきかないが)」などというトラブルが少なくない、PTA活動。義務でもないのに「義務」と思われていることが最大の元凶だ、と著者はいう。いや、義務ではないとわかっているけれど、義務とでも言わない限り、どうせみんなやらなくなる、それはまずいだろう、と何となく思いこんでいて、同調圧力で追い込みあい、自分も他者も苦しくなっているような気がする。
 しかし、同調圧力をかけてまで、全員参加を促すのは違うのではないか?そんな「ブラック」なPTAでは誰もが不幸。惰性で運営されている総会、誰も幸せにならないのに、前例を重視し踏襲する組織…。誰かが変えなければ、この不幸の連鎖は続いてしまうのではないか。現状に苦しむPTA役員は少なくないが、それでも漫然と「前例踏襲」でいったほうが、周囲への説得等の苦労を担わなくて済む。著者が偉いのは、その苦労を背負って立ったことだ。
 保護者にアンケートを取って(これまた「前例がない」ことだったが、「くさいものにはふた」という風潮だった役員たちを説き伏せる)、そこに寄せられたナマの声、特に厳しい声を真摯に受け止めて、会議数を3割減、歓送迎会を廃止するといった改革に次々と着手する。
 誰からも迷惑がられるのではなく愛される学校になってほしい、PTAを「楽しむ学校応援団」にしたい。目的を明確にするためにキャッチフレーズまで決める。「そうだ、学校に行こう。子どもたちに笑顔を!大人たちに感動を!」。「もしドラPTA」イノベーションと称しドラッカーの組織原理を参考にしている本著の楽観さは、正直、くたびれた中年である私には無邪気でついていけないところもある。しかし、「いやいや引き受けさせられるブラック組織」からの脱却を図るには、斜に構えている場合ではないのだ、このノリが大切なのだ。
 PTA活動は義務だからと学校へいやいやながら向かう保護者(「お母さん」と著者はつい書きがちなのだが)をみていて、子どもたちは将来ボランティア精神に富んだ大人に成長するだろうか。素朴ながら強い願いに衝き動かされた著者は、すべてのPTA活動を、強制力のない自由意思のボランティアにする改革を果たす。委員会を全部廃止し行事係を廃止する。役員会はボランティアセンター(ボラセン)とする。会長は団長へ。
 そして、学校も明るく楽しく、PTAを楽しくしたい、という著者の願いは実を結んでいく。やりたい人がリードしていく「夢プロジェクト」方式による、「やらされ感」のない行事への、保護者達の感想その他に著者は涙する。協力して、理解してくれる地域の人々への感謝も随所に示される。いい人だ…、この人柄も慕われて、改革への協力を引き出せたのだろう。
 地区のPTA連合会も率直に言って負担か重い。こちらについても著者は会議の簡素化など提案し、実現していく。
 「おかしいと思ったことには声をあげればいいのです。賛同してくれる仲間が増えていけば、少しずつ変わっていく、変えられると思います」。「1人では何もできなくても、仲間がいれば百人力です。協力してくれた人も、反対の意見を言ってくれた人もいなければ、ボランティア制への移行はできなかったでしょう」。うーむ。漫然と年度終了間近まで来た某中PTA会長としては、感嘆し、そして反省することしきり。ここでも、不断の努力が必要であった…。
 ほぼ母親ばかりがPTAを担っている、しかしいきなり会長を父親が頼まれるといったことに特に疑問を抱かないなど、PTAとジェンダーをめぐる問題については無関心など若干残念な点もあるが、しかし、不断の努力を惜しまず、ぶーたれず周囲を動かしていった著者を尊敬する。悩めるPTA関係者に希望の書となるはずだ。(良)
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