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川名壮志「密着 最高裁のしごと―野暮で真摯な事件簿」岩波新書 2016年

 あれ、これってジュニア新書じゃないよね?と2、3回確認してしまった。イラストが入っていること自体が珍しいし、このイラストが面白いわけではないけれどとてもわかりやすくて秀逸(なのにイラストレータの名前が入っていないのが残念)。文章も明快平易。「僕」「僕たち」という主語も珍しい。法律用語や判例の解説も具体的で明瞭。凡例に「学問的な厳密さより『わかりやすさ』および『実際の運用』を優先した」とあるとおりで、さすが新聞記者の本。
 「第1部家族のあり方を最高裁がデザインする(民事編)」「第2部 市民が裁く罪と罰 手綱をにぎる最高裁(刑事編)」に分かれる。さらに「第1部」は「わが子と思いきや赤の他人だった」「夫は『主人』ではない 妻のアイデンティティ」の2章に分かれ、親子関係不存在確認訴訟と夫婦別姓訴訟の実際の裁判にそって最高裁の判断の仕組みが裁判官の実名とともに紹介される。
 「第2部」は「死刑と無期懲役のわかれみち」「求刑超えに『待った』をかけた最高裁」の2章で死刑の問題と裁判員制度の問題点を実際の事件と判決をもとに明らかにしている。個人的な関心のせいかもしれないが、刑事編のほうが突っ込みが鋭くかつ親しみやすい。裁判員制度についても市民の感覚を大事にするというポイントを守るためにプロの裁判官をいさめる最高裁の姿勢がクリアに描かれる。
 最高裁というと「法の番人」「人権の最後の砦]といわれるが、ほんとそうかなあ「国家権力の番人」じゃないかと思うことも少なくないが、本書は公平に最高裁のポジティブな面も明らかにしていて、納得がいく。少ないページのなかに15人全員ではないが、少数意見が紹介され、裁判官の顔が見えてくる書きっぷりだ。
 法律の本で堅苦しさを感じさせない本は初めて。本書の対象となった裁判所にも書き手の属する新聞社にも希望がもてるような気がした。
 軽くも重くも読み方次第。おすすめの1冊。(巳)
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