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今井COCO『親友は、エイズで死んだ―沙耶とわたしの2000日』青土社 2014年

 いつも店のナンバーワンだった「私」(ココ)に脅威を与えた女性、沙耶。よその店から引き抜かれて入店してきた「全身ブランド」の生意気で高飛車な女だった。ところがふたりが同じバンドのファンであることがわかり急速に親密な仲になる。一緒にライブを聞きに行き、盛り上がりついには同居する。休みの日はもちろん、仕事が終わってから(夜の商売だからふつうの人が眠っている時間)も、カラオケ、居酒屋、ダーツ、ビリヤード、逆ナンで一緒に遊ぶようになった。彼氏と別れたばかりの沙耶に男友だち亮太を紹介したのも「私」だ。
 沙耶の風邪がいつまでも治らず、疲れやすいことを心配して、でも実は軽いノリで心細がる沙耶と一緒に二人はHIV抗体検査を受ける。沙耶だけが陽性だった。その日を境に生活がひっくり返る。沙耶は亮太のことを案じる。どっちがさきかはわからないにしても亮太も可能性が高い。自分から言い出せない沙耶に代わって「私」が亮太に受検を説得する。「マジ、ヤバイ」と思った亮太も検査を受ける。彼が陰性なのが喜ばしいのか、それとも陽性で沙耶と悩みを共有していくのがいいのか、沙耶の立場を思って「私」の心は乱れる。
 亮太は陰性だった。と分かった時点から沙耶と距離をおこうとする亮太。逃げる亮太に怒りを炸裂させる「私」。ここのやり取りは迫力があって思わず息を詰めて読んでしまった。
 それからも2年以上、沙耶と「私」はルームシェアを続ける。しかし、次第に衰弱していく沙耶は『祈り』に救いをもとめるようになり、生活時間のくい違いもあって二人は別々の生活をする。
 「私」は水商売をやめ、サイト運営の仕事につく。そんな中で沙耶の死を知らされる。
 沙耶が病に侵されてから「生きる理由」を一生懸命に探っていることをPCの履歴から「私」が知って衝撃を受ける場面がある。いくら親しくても、死に直面している人間とそうでない人間は全く違う、越えられない壁があることがさりげない表現だがとてもしみじみと響いてくる。
 沙耶の闘病生活場面がほとんど描かれていないので、あっさりした印象を受ける。ちょっと物足りないとも思えるが、おしゃれで美しい少女たちの壊れやすい感性がみずみずしい。
 ストーリーの展開上、時々躓く箇所がある。たとえば「私」と沙耶の「ものがたりのはじまり」にブーツ事件がある。沙耶が「私」のブーツの一方を捨ててしまった事件である。持ち物隠しは幼い女の子のいじめのパターンの一つだが、どうして沙耶がこんな幼稚なことをしたのか、激しく怒ったはずの「私」がどうそれを飲み込み親友になったのか。バンドの趣味が同じであることがすべてを乗り越えるという設定は納得しにくい。全体的に細部の詰めが甘いのが気になるが、これからが楽しみ。(巳)
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