判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
水城せとな著『失恋ショコラティエ9』小学館 2015年

 8巻までの書評にも書いた通り、少女漫画の王道をいくカワイイ系の絵柄の上に「失恋」「ショコラティエ」。いまどきそんな甘ったるいモノ読んでいられるかというようなおバカ漫画かと思ったらさにあらず。毒満載の恋愛論漫画ではないかこれは!と続巻が待ち遠しかった。いよいよ9巻で最終巻。
 ざっと通読すると、「まあ落ち着くところに落ち着いたかな」とぼんやり思ったが、再度じっくり読みなおすとうーむ。もはや毒というより不吉な兆候。それもそこかしこに。そのままエンディングへ。最後のシーンの気持ち悪さは極め付け。恋愛って不気味で気持ち悪いものっていうことを、最後にも念押しのように見せつける。
 サエコさんはDVをする夫のもとへ戻ってしまった。一応夫は「優しくなった」が、信じてはいない。「今はね!でもああいうのってそのうちまたモードチェンジしちゃったりするでしょ〜」。恋愛強者のようでいて、一番醒めている。したたかで醒めている女でも、獲得できるのは、せいぜい束の間の安定、暴力をいつまた振るわれるかわからない、うっすらとした緊張感のもとでの生活か。何だかとても切ない。
 DVも放置されてしまうし、自分を裏切ってしょうもない男(裏切ったのはこいつなのだし、そもそも恋愛は自由市場ではないか…)とつきあっていた友だちを傷つける暴力も刑事事件などになった気配はない。むしろ傷害事件の被害者の方が自分を責める。いやこれは人権教育のテキストでないのだからと言い聞かせても、弁護士としては、何だこの展開はっ、といたたまれない。傷害事件の被害にあったある種の興奮状態のまま結婚を決めるのも(それも就職しないで)、いや〜だから男に依存するばかりなのは危ういって学習効果がないのっ、と叫びたくなる。
 と、気持ち悪く、納得もいかないのだが、でもその薄気味悪さ、不吉さが隠されていないので、かえって読み応えがあるのかもしれない。
 後書きにはパリにチョコレート取材の旅に行って買って帰ったチョコレートはなんと24sもあったとある。チョコレートを大量に食べ、大勢の目がキラキラまたはギラギラしたショコラティエにも取材を重ねたという。なーるほど。やはり濃密な仕事ぶりが充実した漫画を生むのだ。
 好きかときかれたら好きではないが、優れた恋愛漫画、いや恋愛論漫画であることには太鼓判をおす。(良)
Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK