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『事実婚』 二宮周平 一粒社 2002年

 題名は実にすっきりと「事実婚」。事実婚をずっと研究してこられた立命館大学の二宮周平教授が、事実婚に関する判例を集積し紹介されている。
 一応法律家向けだが、事実婚をめぐる具体的な紛争、判決の要旨、そして問題点が、わかりやすくまとめられていて、法律家でない人が読んでもとても有益でおもしろい。特に事実婚を実践している方には、おすすめである。
 はしがきには「法律婚が解消されていないために内縁にとどまるカップル、さしたる理由もないまま婚姻の届出をしないカップル、夫婦別姓の実践、戸籍制度あるいは婚姻制度に伝統的に浸透している性別役割分業への反発、制度に囚われない自由な男女の結合への指向などから、主体的に婚姻の届出をしないカップル、法的な婚姻が認められていない同性カップル、安定的で継続的な結合への意思が薄弱なカップルなど、婚姻外の共同生活は多様化しており、従来のように『婚姻の届出を欠くだけで、実質的には婚姻と変わらない』関係という概念で、ひとくくりにはできない。しかも同居は必ずしも男女の結合にとって本質的要素ではなくなり、共同生活の実体自体も多様化している。もはや婚姻を規範にそれとの対比で、婚外関係を正当化し、法的保護を論じるような発想では、現実には対処できないように思われる。」とある。たとえば、筆者は、事実婚の片方に不貞行為があった場合、その相手である第三者に対してまで他方の配偶者からの慰謝料請求を法律婚同様に認めるのは、いきすぎであるとする。しかし、事実婚の片方が死亡したとき、他方に離婚の財産分与規定の準用を認めるなどして残った配偶者の生活は守られるべきとする。
また、筆者は、事実婚を法的に保護する根拠は、ライフスタイルの自己決定権、幸福追求にあり、この考えは、同性カップルにも法的保護の可能性を開くことにつながるとする。
 法律家の中でも、「法律婚家族」という形態に特別な保護を与えるべきとする考えは、有力あるいは特に裁判所では主流といってもよい。本書の筆者のとる見解とは、明らかに根本のところで深く対立する。家族法の中でまず団体を観念するか、個人の権利義務関係としてとらえるかの違いでもある。
 GALとしては、ライフスタイルに中立な制度を構築することこそが、誰しもが生きやすい社会の条件であり、本書のようにそれぞれのライフスタイルの自己決定を肯定する考えに軍配をあげたい。読者の映画評に出てくる名作「ショコラ」の司祭のせりふのように、「何を禁じるかよりも、何を受け入れるかこそが大切」。シングル、同性カップル、子のいないカップルなどを異端視しない、されない社会で生きていたい。


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