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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
佐藤留美著『資格を取ると貧乏になります』新潮新書 2014年

 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする(弁護士法1条1項)。この条文を旨とし、だからこそこの弁護士という仕事を天職と思い、日々やる気満々で取り組んでいる私。そんなガチでアツいやつ、ヘン、他にいない?いやいや、どっこい、アツくて尊敬できる弁護士、たくさんいる。
 でも、そんなの能天気に過ぎるのか?とこの本を手に取ってみた。私よりあとの法科大学院世代は、確かに大変そうだ。このあたりは制度設計から見直しの時期なのだろう。しかし、法科大学院で実務に役立つ学びを頑張って実践している実務家たちもたくさんいて、予備校で詰め込んだ知識を吐き出して司法試験をクリアした私にとっては、法科大学院は羨ましい面もある。最近の法科大学院をめぐる言説は、スタート時の期待に満ちた称揚ぶりからの反動なのか、一転「ネガティブキャンペーン?」と思われる言説が溢れている。とはいえ、法科大学院の設置数等、次世代のために早々に見直しが必要だろう。そうでなければ、有為な人たちがネガキャンに臆して、法律家を目指さなくなってしまう。そうなれば、法に基づく公平で人権がしっかり保障された社会が覚束なくなってしまうだろう(つい、大―きく話を持っていく)。ゆゆしきことだ。
 法科大学院世代の苦境には胸が痛いが、しかし、本書には「貧乏」話というより「そんなに儲からない」程度の話が多い。「現実には年数千万円の弁護士など、いわゆる4大事務所のピラミッドの頂点、パートナーくらいなものでしょう」などとあっても、もともとそんな年収を望んでもいないし、ふーん、でおしまいである。
 田中森一が特捜のエース検事から弁護士として独立したとき、ご祝儀総額は6000万円に達した、そんな時代もあったのに、なぜ食えない弁護士が増えたのか?という問題提起があっても、田中森一がおかしいわけで…。顧問先に新人連れて行こうとしても、「うちは新人教育の場でないので、先生一人でいいです」と言われるようになり、新人分のタイムチャージが取れなくなるというくだりにも、それはしょうがないのでは、顧問先が今までよく負担してくれたものだ、という気がしてしまう。
 所得が生活保護なみの弁護士が5人に1人という冒頭のくだりにショックを受ける人も多いかもしれない。実際大変な人もいるだろう。でも、ダブルインカムで、「子どもの中学受験のために仕事をセーブ」している人もいるし、毎晩飲み歩いて経費率が異様に高い人もいるときくし…。
 私は能天気に過ぎるのかもしれないが、そもそも、お金の面だけ書かれてもねえ?年収数千万円がほとんど無理でがっかりする人より、やっぱり弁護士法1条にアツくシビれる人よ、集まれ、である。
 本書の後書きにあるこのくだりこそ冒頭にもってきてほしい(それでは本にならないか…)。「取材をして気付いた。その資格が拠って立つ原点に立ち返り、自分を頼りにしてくれる人の役に立てればと損得勘定抜きで善意を発揮している人は、不思議と仕事にあぶれていない。いやむしろ、引っ張りだこになっている、と。」確かにそうなのだ。(良)
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