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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
中川淳一郎著『ネットのバカ』新潮新書 2013年

 「ウェブはバカと暇人のもの」(光文社新書、2009年)から4年を経た2013年、ネットの世界の階級化は進み、バカと暇人はますます増える一方という現実を、ネットニュース編集者ないしネット小作農(いささか自嘲気味)の著者はつぶさに描き出す。
 ネットこそ自由な言論のプラットホームである。そのように唱える人は今もいる。しかし、数々の炎上事件(「バカ発見器の事件簿」)を追えば、ネットの言論は不自由、それこそ真実であることがわかる。
 ネットでセルフブランディング?結局芸能人などもともとの有名人、リアルの場で実績のある人こそネットでも勝者なのだ。とはいえ、嵐など中でも最強な有名人は、SNSに参入などしない。料金表をつけられて、細々とステマ、ステルスマーケティング(広告なのに広告と明示せず宣伝する行為)を続ける、侘しい芸能人たち。いや、侘しいのは、まんまとのせられて即クリックして買ってしまう人々か。
 ネット初の有名人だって皆無ではないと反論する人もいよう。確かに細分化すれば人気者になれる可能性は残されている。しゃぶしゃぶ店枠、人気外国人店主、コンビニアイス評論家…。1つのジャンルにおいては注目される人物をつくりだすことは可能、極めて低いがゼロではない可能性が残されている。注目されたいのであれば参考になるコツが、クールに披露される。
 小学館の「週刊ポスト」「女性セブン」等の4誌からネットニュースを発信することになった経緯から、ネットでは、バカ、エロ、バッシングがウケる、技術が発展しても人は賢くはならない、ということも、赤裸々に明らかにしてくれる。その他Yahoo!トピックス(ここに登場した記事のPVは数百万を下らず、リンクされた記事も含め「ヤフトピ祭り」と呼びたくなる事態になるとか)に登場するパターンの分析から練り上げた「ネットでウケる新12ヶ条、叩かれる新12ヶ条」も、非常に参考になるが、たとえば「叩かれる新12ヶ条」の「反日的な発言をする」「韓国・中国をほめる」などに、暗澹たる気持ちになる。
 「ウケる新12ヶ条」のひとつ「ジャズ喫茶理論に当てはまるもの」というのは面白い。ジャズ喫茶に行くような人々には自らのセンスの良さを誇りたいという欲求があり、超メジャーなジャズミュージシャンのアルバムをリクエストすると「この素人め」とバカにされ、玄人好みのミュージシャンのアルバムをリクエストすると「おぉぉぉ!こいつ、分かってる!」と他の客から思われる。つまり「衆人環視の下では、人々はイケてる人と思われたい」ということである。ということで、基本的に実名制のフェイスブックの世界では「ジャズ喫茶理論」が当てはまる。ツイッターでは大人気だった「世界の男性器のサイズ」に関する記事は、フェイスブックでは全く人気がなかったという。フェイスブックでウケるのは、「名言」の類だ。「人は、自分のリアルな人生がかかわると、途端に品行方正になるのだ」というまとめに噴き出す。
 身も蓋もないネットの現状を明らかにした上で、第7章では、企業のために賢明なネットにおけるスタンスを教えてくれる。
 第8章の「困った人たちはどこにいる」では、「愛国者たち」、すなわち「韓国・中国を極端に嫌う人」と言い換えられる人たちの「活動歴」をフォローしてくれる。「韓国・中国をホメる」と、この人たちを激昂させることになるので、「新・ネットで叩かれる12ヶ条」の一つにあげたわけである。著者も、フジテレビデモに関し、朝日新聞の取材を受けたことを機に、大炎上を受け、「在日韓国人」認定をされ、トークイベントには爆破予告が来るなどの事態になった。それでも、本著でもこの話題を避けない姿勢は天晴である。「子どもの好きな給食メニュー」3位にキムチチャーハンがランクインしただけで、2ちゃんねるには「子どものうちから洗脳しようとしている」という妙な非難が殺到したといった数々の事件をフォローし、2013年嫌韓デモが過激化している様も記述し、「ネットがあるから多様な意見を知ることができるようになる」というのはウソで、自分がフォローしたい相手を選べるツイッターは心地よい情報だけを入れ、彼らが「マスコミの偏向報道の歴史」や在日韓国人に関する噂とやらを信じ、確証バイアスを強めていくことを教えてくれる。
 最終章、「本当にそのコミュニケーション、必要なのか?」の最後の決め台詞「まずは自分の能力を磨き、本当に信頼できる知り合いをたくさんつくれ。話はそこからだ」を、肝に銘じたい。(良)
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