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三浦まり編著『日本の女性議員 どうすれば増えるのか』朝日新聞 2016年

 タイトルを一瞥して、「数字が列挙されて各国比較とかのデータ分析かな。大切だけど、退屈かも…」と積ん読だった(失礼)。読み出すと、これが面白い、ぐいぐい読める。
 「日本の女性議員に関して包括的に論じる初の一般書」とある通り、がっつりした調査研究の成果である。研究書なのに、読読み進めながら涙がこらえられなくなるところがいくつもあった。議員になった女性たちの乗り越えてきた苦難とそれにも挫けない彼女たちが愛おしくて、だ。
 女性が議員になることを阻むものは、自他ともにある「女なんて」というステレオタイプ、性別役割分業といった認識の問題、勝てる候補=現職=男を優先しがちな小選挙区という選挙制度の問題、「利益誘導政治」が横行する風土で発達する男たちのホモソーシャルなネットワークから女性は弾かれてしまいやすいという問題、諸々ある。露骨な女性蔑視は女性議員が少ないことの結果でもあり原因にもなろうが、度肝を抜かれる。2014年に実施されたアンケート調査によると、964人の女性地方議員回答者の22.3%が抱きつかれたり触られたり、「抱かせてくれたら(票を)入れたるわ」などと暴言を吐かれたりしたという。絶句である。
 それでも、議員になった女性たち。1990年代を取り上げた第2章はとりわけ涙なくしては読めない。今では夢のようだが、女性議員が女性政策をいきいきと動かしえた時代。数はまだまだ少なかったが、それでも、責任のあるポジションにやる気のある女性がついた場合、女性の人権を守り、男女のより平等な社会を構築するための政策が制定されうるのだとわかる。私が弁護士として依頼者を救済するツールとして活用しているDV防止法の制定経過がとりわけエキサイティングである。同法は、超党派の女性議員たちのパワーが結集した成果であった。官僚たちが必要ないとし、組織の縦割の間隙に放置されてしまうところだったDV防止法を制定しようと、女性議員たちは奔走した。その背景には、彼女たちが女性に対する暴力防止への国際的な潮流を肌で経験したことや、草の根の女性たちとのネットワークや自身の前職(メディア、弁護士、看護師etc.)で女性の被害の現状を知っていたことがある。「DV防止法成立に尽力した南野千惠子と小宮山洋子」とキャプションがついたお二人の笑顔(小宮山は背中が写っているのだが間違いなく笑顔)の写真etc.をじっくり見て、女たちの党を超えた信頼関係を築くことの意義に感じ入り、感謝の涙が目からあふれ出る。
 ああ、それなのに。2000年代以降の停滞を取り上げた第3章は重苦しい。女性の非正規労働者の割合は正規労働者のそれを逆転し、女性の貧困は悪化。働くシングルマザーの貧困率は50%を超える。待機児童問題は一向に解決しない。女性の視点に立った政策をいよいよ充実しなければならないのだが、女性議員は活躍する主体というよりも、小泉チルドレン、小沢ガールズといったかたちで話題性を期待される政治的客体として扱われてしまった。少子化問題への危機感から女性の身体に国家が介入するかのような政策が志向され、ジェンダー平等政策は停滞している。私がライフワークにしている(というか実現してくれればライフワークにしないですむのだが…(涙))選択的夫婦別姓も強固な反対に阻まれ、実現していない。閣僚に女性がつくのも定石となったが、ポジションについた女性たちは女性関連政策にコミットしてくれるどころか…。「客体」として政党に選ばれた女性たちは、女性たちとのネットワークがなく、政党の意向に忠実になっているだけなのか。女性が少なく、孤立していると、「男性」化してしまうのか。んぬ。。。と呪詛していてもしかたがない。女性たちのほうからも声をあげ、働きかけていかねばならない。
 そうはいっても呆然としてしまうが、女性議員のキャリアに焦点をあてた第4章(男性と違う!)、女性議員と男性議員の政治意識の違いを論じる第5章、地方議会に目を向けた第6章、女性議員が少ないこの社会の要因を分析し必要な法整備等を論じる第7章を読み進めるうちに、やるべきことはたくさんあると襟をただす。
 女性議員を増やそうというと、編者である三浦まりは、耳にタコができるくらい「女性議員を増やすことに何のメリットが?」といわれるようだ。女性議員が少なく男性議員が圧倒的な現状に何のメリットが?と三浦でなくても切り返したくなる。2014年6月の塩村都議へのセクハラ野次に象徴される、女性に対する差別、蔑視、人権侵害、攻撃暴力が置きやすい現状が改善されるのではないか。民主主義を実践するための機関である議会において、差別や人権を侵害する言動が横行し放置されれば、民主主義の土台が危うい。女性の参画が阻まれたままでは、男女平等の実現に向けた政策は進展しない。少子高齢化社会で人口減少に直面する日本の社会が、女性の権利やニーズに配慮しないのであれば、その「老衰」は加速度をつけていくこと必至。女性議員を増やすことはこの社会を次世代に豊かな社会として引き継いでいくことにもつながる問題なのだ。
 日本の女性たちが初めて参政権を行使した1946年から70年後に刊行された本著を読んで女性の政治代表が公平なものとなるよう、それぞれができることを始めてほしい、と三浦は本著をしめくくる。よおっし!できることをやらねばならぬ。「選択的夫婦別姓も何も実現してくれない、オトコばかりの政治め」とふてくされていてもしかたないのだから。(良)
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