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下夷美幸著『養育費政策に見る国家と家族』勁草書房 2008年

 20何年か前に著者にお会いした。その頃既に、養育費や離婚を研究テーマにされていたが、その研究の集大成の本を手にしたことはとても嬉しい。離婚後の母子世帯の貧困度は賃金の男女格差を反映し著しい。著者はそれを補充する養育費政策として、両親を対決させ使いづらい司法手続(特に強制執行は申立人に心理的抵抗が強く、かつ誰でも自分でできるほど容易でない)ではなく行政による養育費確保策制度の必要性を訴えている。長く指摘され続けながらも縦割り行政のもとでそうした制度を導入することは容易でなく、諦めずに説得的資料をもって研究成果としてそれを訴え続ける姿勢に敬服する。
 母子世帯の所得は全世帯平均の37.8%、平均年収213万円(福祉手当を含む)、勤労収入は171万にすぎない。2002年からの就業支援策への転換は名目であり欠陥が多くあまり利用されていない。一方、児童扶養手当抑制策のみ先に実行され、母子世帯はなお苦しくなった。対比するアメリカ・イギリスの施策の紹介は具体的で興味深い。アメリカの養育費履行強制制度(アメリカにも簡易算定表があるようだ)は強力である。父の探索に行政の情報を総動員し、滞納者に対しては免許停止やパスポートの発行を拒否する。ただし、連邦の親探索サービスは逃げている母子の探索にも利用され監護権や面接交渉の履行強制にも使われプライバシーの問題も生じさせている。イギリスでも1991年の養育費法により父親の追跡、養育費の査定や徴収を行う制度が導入され、その運営機関として養育費庁が設置された。しかし、プライバシーの問題に配慮しながらも、著者は家族介入的政策を通して個人化時代の家族と個人を支えていく必要があると結論づける。
 欧米では福祉依存の問題もある。子育ての手当てをあてにして何人も生んで働かずに食べていく等ともいわれる。しかし、それは子供を産み育てやすい社会の一面でもある。学費がすべて無償という国もある。かたや日本では依存できる福祉はなく、シングルマザーはダブルないしトリプルワークでからだをこわしたりする。母子家庭では私立の学校はおろか国立の大学に行かせることも容易でなく、公立高校までがようやくである。子供の未来の問題として政策担当者に考えてほしいと切に思う。
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