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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『オニババ化する女たち』三砂ちづる 光文社 2004年

時計の針を逆に回そうとする本。のけぞることがいっぱい。いくつか紹介してみよう。
* 生理のときにはうすーい紙を丸めて入れて、そこに意識を集中させ、身体を引き上げ締めて出血をコントロールすることが出来たという昔の芸者さんが賛美されている。しかし、芸者さんが下着をつけなかったり、ナプキンのようなすぐに生理中と分かるようなものを使わなかったのは全く別の理由だろうに。客である男を喜ばすために彼女たちは下着もつけず、内股に楚々とみえるように歩くようになったのではないか。第一、1時間半置きにトイレにいっていたら仕事も勉強も集中できない。もっとも著者はそれをよしとするようで、以下の展開になる。
* 誰とでもいいから早く結婚したほうが良い、結婚しなくても早く子供を生んだ方がいい。身体が若くて元気でいるうちにということはもちろん、自分の女性性を、仕事や社会の中で否定されないうちにガンガン産め、とある。つまり教育や社会的経験を積むと出産や育児に懐疑的になるから、余分な知識を身につける前に出産させれば少子化は止まるという。筆者は一応、出産後の教育や仕事が保障されていることが大事とは言っているが、女性たちが苦労して男女平等の教育機会を獲得し、まだ差別はいろいろあるけれどとにかく形式的には男女平等に近づいてきた労働条件を否定的に捉える。まったくの歴史の否定である。
* セックスをしないと女はオニババとなるという。なぜならセックスは身体の状態を緩めることであって、ずっと緊張したままだと、子宮関係のトラブルが生じ(だから子宮筋腫とか内膜症が生ずるとも)、ヒステリー状態となって、若い男を襲うオニババとなるという。「舌きりすずめ』の意地悪欲深おばあさんは充実したセックスライフをおくらなかったから性格が悪くなったのだという。ではそのパートナーであるおじいさんがやさしくていい人なのはなぜ? 男であるおじいさんは豊かなセックスライフを送らなくてもやさしいわけ? それとも「すずめ」に隠されている若い女性と楽しんでいたから? そうならばおあさんが怒るのは当たり前でしょうに。セックスしないからひからびてオニババとなるという説より、村田喜代子の小説『蕨野行』に出てくる山姥の方が私にはよほど良く理解できる。それは窮乏した農村などで労働力として足入れ婚していた女性が妊娠すると食い扶持が増えるからと実家に戻され、実家でなんとか出産まではするものの直ちに子供は殺され、同時に放り出される。こんな女性が山奥にたどり着き木の実などを食いつないで生きていくうちに、まだ若いのに老婆のようになるというのである。
 いうまでもなく、この著者にとって女性は産む性でしかない。では産まない選択をした女性、産めない女性、そしてゲイの女性はことごとく否定されることになる。
 いまどきびっくりな本の著者はれっきとした高学歴大学の教授で、専門はリプロダクティブヘルスだそうな。「身体に向き合う」とか「施設出産(管理出産)」への疑問な.ど口あたりのいいことも書いてあるが、とっても妙な本である。
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