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『危ないブランコはかたづけて!!』(箱ブランコ裁判を考える会編 2004年 現代書館)

 子どものころ、立ちブランコをこげなかった私は、箱ブランコにゆらゆらのっているのが好きだった。だから箱ブランコで大怪我ということがなかなか理解できなかった。が、子どもというものは遊具を使って想像以上の遊び方をするということさえわかれば、この一見安全そうなブランコの危険性に気がつく。
 岡部咲さんは9歳のとき、学童クラブから公園に遊びに来て、大揺れしている箱ブランコに引き込まれ、ブランコと地面に挟まれて大腿骨を骨折するという大けがをした。小学校4年生の少女は激痛のなかで、公園の管理責任者である藤沢市とブランコの製造メーカーを裁判で訴えることを決意する。
 本書の冒頭に咲さんの裁判における冒頭陳述が掲載されている。彼女は自分が怪我をして入院している部屋に同じくブランコで怪我をして子どもが入院してきたこと、そして母親の調べによると全国でこの形のブランコで頭を打って亡くなった子どもがいること、にもかかわらず、だれも責任をとっていないこと、ブランコはそのままであることに驚き、自分のような事故が二度と起こらないようにと裁判を起こしたのだ。
 少女を支える両親、弁護団、箱ブランコを考える会の活動はめざましい。とくに過去の事件の調べるために新聞の縮刷本を国会図書館に行って調べる母親の努力はすごいものがある。4種類の新聞の19年分を読み通してついに小さな小さな記事を発見するのである!
 この不幸な事件を通して、自分だけの事故から社会的な視野をもつまでに、少女もその両親も大きくおおきく成長していく過程がよくわかる。普通の裁判記録と違ってベースの部分は小学校の教師である父親が書いているので、専門的な法律論に陥らず、とてもよみやすく事件の全貌・本質がわかる。裁判を起こそうと考える人には実践的に参考になる。
 巻末に母親の努力の賜である箱ブランコ事故一覧表がのっているが、これだけの犠牲を出しているにも関わらず、結局、最高裁で少女は負けてしまった。でも、実際にはブランコは撤去されたので、彼女の願いは実質的にはかなったとはいえるのだが。
 最後に少女は書いている。「私は、今、中二ですが、裁判を体験したし、法律も少しわかったので、将来は勉強して、裁判官か弁護士になりたいと思います。」そして、受験の自己PRには、箱ブランコ裁判の原告として活動したことを書いたという。
 元気と勇気がわいてくる1冊。

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