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斉藤豊治『ジェンダーと刑罰論』法律時報78巻3号 2006年

 東北大教授の筆者が改正刑法の強姦罪や強制わいせつ罪など性犯罪の法定刑のひきあげ、強姦罪・強制わいせつ罪における「暴行・脅迫の意義と程度」及びその認定、などについて論じたものである。改正内容、その残した課題、ジェンダー視点での問題などが簡潔でわかりやすい。ただし、課題はまだ大きいこともわかる。

 筆者は、二の1では、強姦罪等の法定刑の下限を引き上げて強盗罪等と揃え、アンバランスの是正したこと自体には賛成するが、強盗罪の法定刑の引き下げを通じてバランスを回復すべきであった(近年、ひったくり等も強盗罪で検挙するという重罰化が進んでいる)とし、2では、強姦罪の法定刑の引き上げによって、暴行・脅迫の用件を暴行罪、脅迫罪、強要罪のレベルまでに緩和するという解釈運用が説得力を薄め、論者の意図するところからすれば、逆効果となったのではないか、3では、強姦や強制わいせつ罪は、これらの犯罪が、性それ自体、さらにはその基底にある性的人格権に対する攻撃であることを示しているといってよい、4では、結論として、強姦罪や強制わいせつ罪では、性(セクシュアリティ)そのものが、刑法的保護の対象となると解すべきであろう。すなわち、生命、身体、自由、私生活の平穏、財産と並ぶ独立の保護法益として、性を挙げることができる、四では、行為者と被害者との間に、上司と部下、教師と学生・生徒、扶養者(夫)と被扶養者(妻)といった社会的上下関係があるとき、事実上は反抗困難であることが少なくない。こうした関係において暴行・脅迫があったときは、「反抗を著しく困難にする」という認定を積極的に行ってよい、性的関係がかつて存在したからといって、当該の行為の時点で合意がない限り不同意性交であり、安易に暴行・脅迫を否定したり、過小評価したりしてはならない、被告人が同意の存在を主張する場合、同意の立証につき挙証責任の転換を認めるのが妥当であろう、など、重要な指摘をしている。

内容
一はじめに
二暴力的性犯罪の法定刑の引き上げ
 1強姦罪と強盗罪の法定刑のアンバランス
 2暴行・脅迫概念の限定解釈
 3暴力的性犯罪の体系的位置
 4性暴力による「心の傷」
三保護法益としての「性」ないし性的人格権
四暴行・脅迫の程度
 1いわゆる「抵抗要件」
 2性的行為と有形力の行使
 3暴行・脅迫とその認定
 4被害者の同意と挙証責任
五結びに代えて
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