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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『眠れるラプンツエル』(山本文緒・幻冬社)

 雑誌「AERA」の連載「現代の肖像」の「山本文緒」(島崎今日子)を読んで、にわかにこの著者に関心を持った。 
 家族を「幸福であったかくて、強固な檻」ととらえるにもかかわらず、嗜癖のように恋愛を繰り返し、結婚を死ぬほど願望する矛盾、「自分マニアだから私の時間が大切。母を鑑みて、子どもは作らない」という決意、小説のモデルにした親しい友人から「告訴されても、何をおいても、直木賞が欲しい」というすさまじい欲望、それを獲得した喜びは「瞬間風速」で過ぎ去り、過食と過飲に落ち込む…… 何事も「過剰」なこの人は、どんな作品を書くのだろう?
 著者の「過剰さ」に反応して、作品を読みまくった。『眠れるラプンツエル』『恋愛中毒』『プラナリア』『群青の夜の羽毛布』『あなたには帰る家がある』『ブルー、もしくはブルー』……。
 主婦の孤独に背筋が寒くなる。
 「私は洗ったシーツを大きく広げて物干し竿に干した。白いシーツがふわふわと風になびく。私はベランダの柵にもたれて、ぼんやりとそれを眺めた。
 今日はこれから何をしようか。私は自分のするべきことを考えてみた。でも、頭には何も思い浮かばなかった。」
 28歳の女性である。夫はいまふうなテレビ広告を制作の働き者。四季の着替えをとりにくる以外は事務所に寝泊まりしている。海外ロケにいくと妻にいつも同じ香水を土産に買ってくる。その香水瓶は妻のドレッサーに1ダースもひっそりとしまわれている。このうつくしき無関心……というようなデティルに恐怖をおぼえるようだったら、この著者の世界に入れる。
 心弱りしているときに読んだせいか、こわくて切なくて泣けてしまった。

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