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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
岸本佐知子著 『なんらかの事情』筑摩書房 2012年

 岸本佐知子、ほんとヘンな人!「ねにもつタイプ」、身をよじって笑ったっけ。もうあれから6年。岸本ワールド、引き続き怪調!これが好きなひとははまる。コレのどこがどうおかしいの?という人は違う本を読んでくださいな(かわいそうに)。
 そういうことあるある!と膝を打つレベルからどーんと幻想妄想ワールドに飛躍するのが心地よい。もはやエッセイというより幻想小説、いやそんなジャンル分けどうでもいい。
 あるあるといえば、「才能」。少しでも速いレジに並ぼうと日々たゆまぬ工夫と努力しているのに(並んでいる人数だけでなく、人々のカゴの中の買い物の量をチェック、レジ係の人の技能を見分ける(研修中という札をつけている人は避ける)、などなど)、レジで一番遅い列に並んでしまう。お婆さんが前にいるがカゴの品物4つくらいだから「勝算はある」と踏んでいたら、お婆さんがコンニャクの賞味期限に関する質問をはじめ…などなど。ああ…。レジで一番遅い列に並ぶ競技があれば…万雷の拍手で金メダル授与。
 「物言う物」。「このトイレは、自動水洗です」。突然便器に話しかけられた。この先いろいろ指図したり感想を述べたりするのだろうか。恐ろしくなり、何もしないで出てしまう。ところで、なぜ物はやけに落ち着いた成人女性なのか。その物のキャラに応じて幼児とか老婆とかでも…。臓器がしゃべったらどうだろう。満員電車はうるさくて仕方ないか。「肺が真っ黒です」「尿道に石があります」「頭がおかしいです」…
 珍しく岸本が素敵生活のとば口へ入った「素敵アロマ生活」。アロマ道にせっかくはまった岸本の頭の片隅に、ある日、こんな声がした。
 アロマでごわす。
 その瞬間、素敵生活が無効化する。ポットでごわす。ダマスクス・ローズでごわす。青山でごわす。…ああ、ダメだ私の頭の中にも、「ごわす」様、そして「がんす」「でげす」ら仲間が押し寄せる。ハーブ生活がついにでげす化されてしまった。
 「やぼう」。「め」「ぬ」。これはよく似ている。似ても似つかない発音をするのに。間違わないようにしよう。小学校1年生(このときまで私は文盲だったのか。今どきの子どもと違うもんだ)のとき黒板を見つめていたことを思い出した。岸本は、当の「め」「ぬ」はどのように感じているのだろうと思いを馳せる。反目しているとしたら、「ぬめり」で板挟みになった「り」は対応に苦慮しているのだろうか。「ろ」と「る」、「し」と「も」、「は」と「ほ」、「わ」と「ね」にも同じように反目しているのだろうか。ほかにもさまざまな種族がある(一筆書き族など)。一匹狼もけっこういる(「す」「せ」「み」…)。タイトルにある「やぼう」。これを抱いていそうな「ん」。いつかは王様気取りの「あ」を出し抜いて…。
 ダメだダメだ、ピックアップしても、この面白さは到底伝えられない。読んで笑ってください。(良)
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