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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
上野千鶴子・湯山玲子著『快楽上等!3.11以降を生きる』幻冬舎 2012年

 上野千鶴子は学術論文のみならずエンタメ系の書きぶりもできる、稀有のフェミニスト(まあ、何十年も上野が抜きんでているフェミニズム業界?の高齢化もどうかと思うが…)。そして、バブル期のぴあからキャリアをスタートし「現場主義をモットーにカルチャー界全体を牽引する」(帯より)湯山玲子。この2人がタグを組んだからには面白くならないわけがない。と思って手に取ったが、うーん?正直、今一つ乗れなかった。毒のようでいて毒×2になると、薬臭く〜説教臭くなるということか。セックスを反吐がでるまでやったわよ、でも今の若いもんは、と語る二人は、あたかも、「俺は精力絶倫だったぞ、なんだ今どきの草食系男子情けねえ」というオヤジ流上から目線ではないか。「あなたこそ何様?」と思った『東大話法』を2人して評価しているが、あの本と同様のざっくりした上から目線を感じてしまうのだ。時折「私たちご意見番になっている」などという上野の方が、その点少しは気になっているようで、そこはさすがだ。
 まあ、そうはいっても女性がセクシュアリティを語ること自体が未だにタブー視されているところもあるから、これはこれでチャレンジングなのかもしれない…。セックス以上にタブーとされる女性のマスターベーションについても取り上げるところとか。アンチ挿入至上主義とか。
 印象に残った怖い話。湯山(1960年生まれ)はいう。「私ぐらいの世代の高学歴女は、夫に対するDV率が高いんです」。専門職を目指したけれども子どもができてなし崩し的に家庭に入った妻たちが、「子どもをいい学校に入れて、子離れした瞬間に、荒れ始め、手が出た」と。子離れして、時間を持て余した妻が、家庭のために自分の人生の可能性を断念させられたと恨む。上野がいうように「旦那からの話は割り引いて聞かなきゃだめよ」だが、社会に対する復讐のつもりが、生活の破たんを避けるべく離婚はしないが夫にDVする。あるいは子どもを抱え込み、自立を阻む。寒々とする。子どもに迷惑かけていかんと二人は女性のエゴイズムを謗るが、女性たちもまた性別役割分業社会の犠牲者なのだ。
 そうそう、そういう女性たち個人がけしからんというのではなく、社会の犠牲者なのだと、フェミニズムは看破したはずだ。2人にはそんなこと当然の前提かもしれないが、いちいちそういわずに、エゴイストの妻・母けしからんと言うにとどまると、なんか「自己責任」「自己決定」を旨とするネオリベみたいだ。フェミニズムがネオリベすれすれになってしまう危険にも上野は言及する。勝間流のネオリベは効率優先でムダがない、そうではなく、さらに構造の問題を認識するのが、フェミニズムだと、おさらいもする。でも随所に自己責任にしたきりの箇所もある。くどくなっても、いちいち構造を問題視してほしかったな。(良)
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