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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
西原理恵子『スナックさいばら おんなのけものみち』角川書店 2013年

 サイバラの大ファンとして、すぐさまゲット、読了。そこそこじーんとするし、そこそこ笑える。でも、「そこそこ」。サイバラならでは!と膝を打つ、優しい共感にも満ちているけどパワーのある毒が、薄い。ネット上寄せられた投稿を元ネタにしているからか。サイバラの役目は元ネタへの合いの手なので、元ネタがそこそこだと、サイバラ節が炸裂とまではいかない。
 もちろん、さすがサイバラ、大切なことをストレートに書いてくれてはいる。たとえば、「産後鬱って、ひどい方は本当につらいらしいですね。(一歩間違ったら悲惨な結果になっても不思議じゃない)それは母親失格なんじゃなくて、病気なんだと思います。覚せい剤の問題なんかもそうだけど、日本って罰するばかりで、ケアする施設が足りてない。だから治りようがない。(産後鬱も)ケアする体制をきちんと整えることが本当は必要で、そうしないと、永遠に『あの母親は悪かった』ってことになっちゃう。」
 乳幼児を抱えるお母さんたちのキツさ。「言いたいことは山ほどあるのに、へたすると誰とも会話らしい会話ができないまんま、子育てと家事と仕事に追い回されて、一日がおわってく。人が一番太るのって、きっと、そういう時だと思う。」「折り返し地点はきっと来るから。ちょっとずつ巻き返しましょうよ」太ったおなかまわりは、女の履歴書、女のチャンピオンベルト!と称える。
 女が家にこもるとひとつの仮想敵(夫など)をつくって延々思い詰めたりしてろくなことはない。外に出よう。
 などなど。
 サイバラは自分で気づかぬうちに実はフェミニストの語り部なのではと目しているが、しかし、本書では、投稿をネタにしているので、ついつい現状を前提に「良かったねえ」という語り口になってしまう。たとえば、「結婚生活うん十年、長年連れ添った旦那を一言褒めるとしたら、どこよ?」のお題目に「トイレで小の場合も座ってするところ」といった投稿に、「そこかっ!しかも、そこだけかっ!」とツッコミつつ「でも、これもわかるな〜」で収めてしまう。掃除しないのか、その旦那、とツッコんでほしいところだが…。それから、やはり私こそ離婚弁護士、特にDV被害者の事件を専門とする弁護士であるがゆえ極端な例を思い浮かべて見方が偏ってしまうのか、「夫婦って、憎しみもあるけど、突き詰めて考えたら、離婚するしかないって結論になっちゃう。そこをどうスル―していくか」「うまいことガス抜きする技」を心得ていくかが大切っていうような落ち着けかたには、「ちょっと待ったあ!」と思ってしまう(サイバラはDV事案とかまで念頭にしていないのだろうけど)。
 夫婦、育児をテーマにしているから、ついつい「男は」「女は」という素朴な二項対立、ステレオタイプに図式化してしまうのもどうかと…。フェミニストの語り部って自称したのでもないから、勝手にがっかりしてはいけないな。そもそも、スナックさいばらは、「今日も一日頑張った。闘い済んで日が暮れて、やれやれという一日の終わりにゲラゲラ笑ってホッとできる場所をつくりたくって」つくったというのだから、投稿にいちいち痛烈な一撃加えるわけにもいかない。ホッとさせたいわけだから。
 そんなこんなで、珍しくサイバラの本にしては、膝打ちまくり!とはならず、まあまあな一冊。(良)
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