 |
|
安藤ゆき著『昏倒少女』集英社 2015年
いやあ…いい!どれもぐっとくる。5つの短篇のどれもが読んでいる最中、ほのぼのとあたたかくなったり、大切な瞬間にぐいっと胸をつかれたり…。読了後もしばらくじんわりと余韻が残る。
登場する女の子や男の子は、武骨だったり、さばさばしていたり、いい加減だったり、ナナメにさめたふりをしていたり。親とうまくいっていなかったり(と思っていたり)、大好きなお兄さんが結婚して出て行ってしまったり。大声で嘆き苦しみはしないが、喪失感や痛みを味わっている。片思いでなかなか成就しそうもない恋に不安を抱いていたりもする。
しかし、人と人との関係は固定的ではないし、視点をずらせば全然違うみかたも出来たりする。だから、ひょんなきっかけでときめき、恋が始まるときもある。恋人ができて自分のことを邪魔に思っているだろうと思っていた親が、何より自分を大切にしてくれていると実感できるときもある。お兄さんばかり追いかけて自分など見向きもしないと諦めていた女の子が実は自分のことが好きだったとわかったときの男の子のときめきetc.、うう、たまらない!
どの短篇中も、たんたんとした日常が鮮やかな色合いへ変わる瞬間に立ち会える。ぐっとくるその瞬間を描き出す巧みさにうなる。(良)
|
 |
 |
|
|