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仁藤夢乃著『女子高生の裏社会 「関係性の貧困」に生きる少女たち』光文社新書 2014年

 家庭や学校に居場所がなく、さまざまな事情を抱えた10代の少女たち…。そんな「難民高校生」の一人であったこともある仁藤は、そんな少女たちをサポートする活動を行っている(女子高生サポートセンターColabo)。本書で、仁藤は、出会ったJK産業で働く少女たちがそこに行き着くまでの背景や状況をまとめている。
 秋葉原ほか各地で大勢の少女が街で男性に声をかけられるのを待っている。
 生活、心、身体、金銭感覚、学校、両親との関係すべてが乱れ、自分を汚いと思いながら、皆にやめろといわれ、自分でもやめない理由がわからないのに、援助交際を続ける子。
 公立高校を落ち、私立高校に通うようになってから、親から始終「お金を渡せ」と言われるようになり、それが「めっちゃ悔しいんで親にお金を入れるために」リフレで働いている子は、バイトをしている兄と、公立を落ち自分と同じ私立に通うことになった弟は、親からお金のことを言われていないことに、仁藤に指摘されて気づく。親には引っ越しの仕事をしているとあからさまに嘘と分かる嘘をついているのに、親は気づかない、あるいは気づかないふりをしている。リフレの客から「危ない目に遭ったことなんて数え切れませんよ」という少女のことを親が気づかないとは。何と寒々とした親子関係だろう。それでも少女は、親を慕っているのが切ない。
 そのほかにも親との関係に問題がある少女は多々いる。うつ病でテンションの上がり下がりが激しい母から「あんたなんかいない方がいい」「家から出て行ってほしい」「あなたは私の子どもじゃない」等グサッとくるような言葉を言われながら、それは母が悪いのではなく、病気のせいだと思って、「ごめんね」というようにしている子。父も言葉遣いが荒く、怒ると怖い。父の言動も母の病状の悪化を招いているのでは…。どうであれ、両親が荒れているときは、嵐が過ぎるのを静かに待つしかないという少女と妹にとって、家は安らげる場所ではないだろう。それでも学校では明るく振る舞い、援助交際に出かける。むりやり胸を触られて1000円、売春で最低7600円。「私の値段はそれくらいかな」とあっさり語る。自分自身の価値をどれだけ低く考えているのだろう。家庭で大切に愛されて自分は大切な存在だと実感してこられなかったためだと考えざるを得ない。
 仁藤が31人の女子高生(うち7人は中退)を対象にした調査によれば、「病院を受診し、医師に精神疾患と診断されたこと」が「ある」と答えたのは4人。うち2名はいじめられた経験があり、もう2名はDV被害に遭ったことがある。「DV被害に遭った経験」が「ある」と答えた子も4人。「自殺行為の経験」が「ある」は10人、「死にたいと思ったこと」が「ある」はほぼ半数の15人に上るという。
 中高時代にリフレ、お散歩、援助交際を経験し、その後風俗で働くようになった子たちは、中高時代の客は、「風俗では出禁になるような人ばかり」だったと気づくという。中高生が、それも上記の通り苛酷な経験をしている中高生が、プロの風俗嬢に面倒くさがられるような客を相手にしているとは、あまりに危険ではないか。
 なぜそんな危険な仕事に少女たちは吸い寄せられてしまうのか。居場所がなくさまよう少女たちにスカウトたちが声をかける。少女たちにとって彼らは生活の術を与えてくれるように思える。少女たちが監視され、搾取されているという認識をしないよう、支配は巧みだ。「仕事」のほかに住むところ食べるものを提供し、役割とやりがいを感じさせる。学習支援まで行う店もある。私が長くかかわっている児童相談所に駆け込んでくれないのか。仁藤は、少女らはどんなにボロボロになっていても、児童養護施設に入りたくないと主張するという(残念…)。携帯を取り上げる等今までの関係性を隔絶するような形ではない、自由を認めた保護が必要だ。しかし、今までの関係性を隔絶しなければ危ういのではないか、保護にならないのではないか、という現場の声が聞こえてきそうだ。それでは少女たちのニーズにかなわない。
 少女たちには何が必要なのか。仁藤はわかっている、店側とほぼ同じことをすればいいと。@生活が困窮していても教育を受けられる状態にすること、A安心して過ごしたり眠ったりすることができる家、B安定して働ける仕事。そして、それらにつなぐ大人との出会いが必要だ。裏社会の大人たちは、居場所づくりのプロ。街で少女に声をかけるスカウト、励まし、褒めて叱り、居心地の良さを感じさせる店長、たまにやってきて、「期待しているよ」と声をかけ少女を嬉しくさせるオーナー。表社会は声かけをしていない、関係性を築こうとしていない、と仁藤はいう。そして、関わろうとすると裏切られたりしてもバーンアウトしてはならない、買春を「うざい、きもい、死ね」と断られても一向にめげない援交おじさんを見習おう、ともいう。裏社会の大人は儲けのため、援交おじさんは買春のため、それぞれめげない。でも、そのような下心がない福祉担当の公務員等は、そこまで粘れるだろうか…。虐待を受けている幼い子どもたちの生命身体を守るだけでも手一杯なのだから。しかし、少女たちの心身も大切だと考えるのであれば、児童相談所の人員の不足も手当しなければならないし、アプローチも考え直さねばならない。
 「表社会のスカウトに、子どもと社会をつなぐかけ橋になりたい」という仁藤の夢には胸を打たれる。「事件」が起こってから、本人が「こうしたい」と決断してからでないと出番がない弁護士からすると、積極的に手を差し伸べようとする仁藤がまぶしい。仁藤は「私には、何ができるわけでもない」と繰り返すが、いやいや、少女たちと出会い、SOSに気づき、一緒に歩もうとする努力は素晴らしい。出来る限りの応援をしたいと思う。(良)
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