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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『29歳と30歳のあいだには』酒井順子(新潮文庫)ほか

 時代の寵児「酒井順子」さんの著書である。『負け犬の遠吠え』に端を発した、「負け犬」論は、「30代以上・未婚・子ナシ」の女性を「負け犬」と表現したことが様々な論議を生み、新聞や週刊誌でとり挙げられている。彼女の論の特徴は、「負け犬むれよう!」という連帯感をあおるものでも、「勝ち犬に対抗しよう!」とか血気盛んな主張でもない。それだからこそ、多くの共感を生み、また反感をも買う。
 そんな酒井さんが、1998年に出版したのが『29歳・・・』で、『負け犬の遠吠え』のプロローグ的位置づけを持つ。『負け犬・・・』よりも、私自身の年齢そのものなので親近感を覚え手に取った。私はこれまで、原田宗典『17歳だった!』、高野悦子『20歳の原点』、大学在学中は五木寛之の『青春の門』と、年齢に応じてその年齢を描いた本を手に取ってきた。でもこの『29歳・・・』を買った時が一番恥ずかしかった。29歳とはそういう年齢である。
 29歳―――つきぬけた感じもしないし、だからと言って20代を代表する年齢とも言いがたい「ふんぎりのつかない年齢」である。結婚していないと「あとちょっとだねぇ」と勝手にカウントダウンされ、「なんで結婚しないの?」と質問攻めに合う。そして2つの女性像を求められる(というより、押し付けられる)。1つは、「結婚をあせっている」女性像で、もう1つは「結婚のことなど考えず、バリバリ働く」女性像。そう言えば、ドラマの『やまとなでしこ』で、松嶋奈々子演じるさくらこが「女がもっとも高値で売れる27歳」と豪語したことを思い出す。当時は半ば他人事と思っていたけれど、今となっては納得できる。値崩れの階段を急降下していく時に初めて、あの時が最高値だったと気づくものなんだろう。29歳とはそういう年齢である。
 30歳―――それが、30歳になった途端になんだか「フレッシュマン気分」になるそうである。ちょうど高校3年生と大学の新入生との違いにたとえられる。その上、仕事で20代の女の子と軽く見られていたのが、ようやく一人前に見られるようになるし、結婚してなくてもあせらなくなる(周囲はそうは見なくても本人はけろっとしてることが多いらしい)。他につけこむスキを与えない「文句あっか」的な響きをもつものとして、30歳が実に魅力的に描かれる。その範囲は、一人暮らし、結婚、出産、改姓、仕事(おじさまの質問への対処の仕方)など多岐に渡る。

 さて、いいとこづくしの30歳を目前に控え楽しみであるとともに、29歳の私はもう少しこの「ふんぎりのつかなさ」と付き合わないといけない。そう思うと少々憂鬱でもある。 (鴨川明子)
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