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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
犬伏由子・井上匡子・君塚正臣編『レクチャージェンダー法』法律文化社 2012年

 今や次々と刊行されているジェンダー法の教科書に更に1冊が加わった。「ジェンダー法の教科書は揃えているからもう不要」などと思わず手にとってほしい。コンパクトなこの一冊の中に,教育,家族法,不法行為,労働,社会保障,性犯罪,DV,ストーカー,リプロダクション,政治行政,司法など多岐にわたる分野が網羅されている。その上それぞれの論稿に基本の前提知識から発展的な課題までぎゅっと凝縮されていて,読み応えがある。ジェンダー法を学ぶ基礎として憲法・民法・刑法・社会法・国際法の基本事項を解説する第0章や,日本,諸外国における性差別の歴史と現状を概観する第1章・第2章にも,パーフェクトな入門書を目指す編著者の心意気を感じる。
 「ジェンダー」ときけば,「女性の問題でしょう?自分とは関係なし」と思ってしまう男性の方々にこそ,第17章「男性にとってのジェンダー法」を読んでいただきたい。男性も,ジェンダーの束縛に苦しめられている。それでも,労災補償の障害等等級表が「外貌に著しい醜状を残すもの」につき男女で等級を違えていた点につき,合理的理由のない性別による差別的取り扱いとして,憲法14条1項違反とした京都地判平22.5.27後,等級の性差別がなくなったように,声をあげ続けることが,肝要である。
 更に,最終章の第18章「ジェンダー法学の応用」は,性別による差別に対する理解を,それ以外の領域に援用した考察を展開する。婚外子法定相続分差別訴訟,国籍法違憲判決,さらには,外国人差別,部落差別,同性愛,性同一性障害に関わる諸問題をも俎上にのせる。本著は,ジェンダーについて問題意識を深めた入門者に,さらに,女性以外の様々なマイノリティの人権についても認識するよう,導いていく。
 入門書と言いながら充実した本著を世に送り出した編著者に拍手したい。
 なお,ただ一か所,「近い将来の選択的夫婦別氏導入は難しそうである」(124頁)との一言には,夫婦同氏原則を定める民法750条を違憲,女性差別撤廃条約違反として訴える弁護団の一員として,脱力した。著者も,民法750条に批判的ではあるのだが,世論(とはいえ今や拮抗している。50代以下はもはや選択的夫婦別氏制度に賛成の方が過半数。)に悲観的にならず,前向きな見通しを力強く訴えていただきたいものだ。(良)
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