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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
春日武彦文・吉野朔美漫画『つまらない人生入門 鬱屈大全』アスペクト 2011年

 私は自分をひたすら楽観的、ポジティブな人間だと思っていた。しかし、案外そうではないかもしれない。
 精神科医の春日武彦さんと漫画家の吉野朔美さんのタグによるネガティブな気持ち(絶望感・喪失感・嫌悪感・脱力感・孤独感・焦燥感・無力感・誇大感・罪悪感・不安感・被害感・空虚感・違和感)のオンパレードをすいすい読み進めながら、どこの部分にも「あるある」「わかるわかる」と頷くことができてしまったのだ。相当ブラックなまなざしを向けていたことをあけっぴろげに語ってもいいのかと読者として心配になるくらいに患者や子どもの頃の同級生etc.についての細やかではあるが辛辣な分析が披露されていく。腑に落ちるだけにとどまらず、自分でも細々、次々と思い出していく。「あのときあの教師のあのふるまいに抱いたのが嫌悪感だったな」、「「被害者意識を心の糧にしている人」ってあの人はまさに…」などと。自分の中にもポジティブどころかダークなところがある、いやそういえばブラックなことばっかり考えているかもしれないぞ、と思えてくる。まあ、女子会だってネガティブなことのほうが盛り上がるものだ、そういえば(「あの人健康だね」「本当だね」「私も健康そのもの」「それは良かった」といったことではすぐ話が途切れてしまうだろう)。
 「ネガティブだからといって深いとも限らない、むしろ情けないというか、しょうもないことばかりというか」(春日氏、218頁)、というのも頷ける。そんなに嫌がることもない。全くネガティブな感情がなければ、人生は平板でつまらない。
 ネガティブなことに向き合うのを避けているうちに、ちょっとずつずれていき、大変な事態になりうるから、侮れない。一足飛びに「電車に飛び込む勇気があるかどうか」といったことになりかねない。そんなときに、「え、なんで電車なの?」と能天気なことを言ってくれる友だちがいたら、あれ、生きるか死ぬかを悩んでたのに、なんで電車なんだっけ、と我に返るかもしれない、という吉野朔実さんのコメント(219頁)にも、なるほどとも思う。
 吉野朔実さんの漫画も大好きだった。しばらく読んでいなかったのに、4月20日にお亡くなりになったとのニュースに動揺した。動揺するままに検索していくつかの本を入手。この本ほか、遺された作品をしばし読みふけりたい。ご冥福をお祈りします。(良)
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