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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『心の開国を』(西島大美・中央公論新社)

 新聞で、自分の顔くらい大きな白いボウタイを結んだ相馬雪香さんの写真をみた。美しくて気品がある。90歳で、難民救済と地雷を地球上からなくすために活躍中である。
 日本には(に限らないのかもしれないが)、ときどきこういう女性がいる。育ちが良くて、国際的視野を持ち、行動力がある。たとえば、先日亡くなった加藤シズエさん、犬養道子さん、それから緒方貞子さんも。なにか共通したものがある。なんだろう? 
 相馬雪香さん。憲政の神様といわれた尾崎萼堂を父に、日英の混血のテオドラを母に持つ。父から熱い血と真摯な思想を、母からイギリス流の厳しいしつけとリベラルな考え方を受け継いだ雪香は、明治の末に生まれた女性にしては珍しい恋愛結婚をして、4人の子どもを育てている。戦時中、夫ともに「満州」で暮らしてもいる。ここからソ連の対日戦争参加の前夜、間一髪で帰国している。他の日本人と違って特別な情報を得たせいなのか、情報分析が正しかったのか。ここらあたりは詳しく書かれていないのは、残念である。
 本書は「育てられた日々」「行動する日々」「生涯現役の日々」の三部から構成される。相馬さんの行動の柱は「MRA(道徳再武装)」、「難民を助ける会」、「対人地雷廃絶」である。どれも政界、財界の人々を結集している。「相馬のばあさまに頼まれてがしょうがない」と、たとえば中曽根康弘元首相まで引っ張り出すところがすごい。人脈は広いけれど、まあ上流階級と一流芸能人ですね。 
 よき時代の慈善家の系譜に連なる人だと思うが、九〇歳にして講演会などに足を運びメモを取り、討論を辞さないという闘志と実行に移していく組織力・行動力がすばらしい。
 でも、こんなにいつもすっと生きてきたのだろうか。悩みや葛藤がないはずはないと思うのは、凡人の浅はかさだろうか。
 本人の生存中に伝記を書くことの限界を感じた。

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