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『戸籍の性別記載の訂正は可能か(1)』 二宮周平 戸籍時報555号 03年5月

 日本では、性同一性障害の人の戸籍の性別変更申立は、これまで却下され続けてきたが、同じ戸籍のある韓国(日本が占領時代に戸籍や法制度を韓国に持ち込んだ)では、続けて認める判例が出ている。戸籍法の中に、「錯誤または遺漏」があるときに記載訂正ができるとする条文があることも、両国は同じである。
 二宮論文では、東京高決平成12年2月9日と、釜山地方法院家庭支院2002年7月3日決定の判決文を比較し、その違いを際立たせる。性別概念について前者は生物学的性のみでとらえ、後者は精神的社会的存在としての性別概念を受け入れる。特に姿勢の違うのは、判決の創造的姿勢である。前者は立法による解決に委ね判例による解決には消極的であり、後者は、「本来、人間の言語は多義的であり、時代によって変わるものなので、これを解釈する者は様々な意味の中でもっとも適切な意味を選択しなければならず、場合によっては、立法者がとうてい予想できなかった新たな意味を付与する必要が生じる場合があると考えなければならない。このように、裁判官は法を解釈・適用することにおいて、形式的で概念的な字句解釈に留まらず、その法が担保する正義が何であるのかを推し量り、正義実現の方向で法の意味を付与すべきであり、正義実現のため必要な限度内で、成文規定の意味を拡大解釈したり、縮小・制限解釈を行うことによって、実質的な法創造機能を発揮すべきである。(中略)我々は変化した新しい時代状況に合わせて立法者の意思を類推すべきであり、戸籍訂正の意味に関しても、伝統的な解釈を越えて、まったく新しい方式の解釈を通じて、現実と乖離しない真正な正義を具現しなければならない」と述べる。筆者は、釜山決定がこうした創造的姿勢を積極的に示すのは、憲法の理念についての理解の差であると指摘する。
 釜山決定の中では、「人間としての尊厳」「幸福追求権」「自己決定権」が繰り返し語られる。他国の例とはいえ、実務的意義があるので、釜山決定は同号にあわせて全文紹介されている。格調高い判決文なので是非一読を。感動的である。人権にかかわる裁判で苦労している実務家には引用したくなる文言が入っている。ただし、性同一性障害を「病気」「障害」とするなどの問題点も、二宮論文は指摘している。
 同号は630円 日本加除出版株式会社

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