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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『ザ・フェミニズム』上野千鶴子・小倉千加子(筑摩書房)

 フェミニストとは誰か−−『男流文学論』以来の顔合わせという2人が、そもそもフェミニズムとは何か、というところから話し始める対談集。
 「嫌いなものは結婚してるフェミニスト」「夫婦別姓あほくさ派」等々、辛口の批評が飛び出すこと、またお2人の関西ことばに抵抗感を抱いてしまう読者が多少いるかもしれない。しかし、80年代から今に至るフェミニズムの流れを振り返り、男女雇用機会均等法の成立やセクシュアル・ハラスメントという認識の社会的浸透などが、結局はフェミニストの達成した成果ではなかったことを分析するフェミニストたちの苦悩には共感できる。ただ、その苦悩がはっきり出てくるのが後半の「東京密室対談」なので、愚痴っぽい前半の「大阪公開対談」で読むのをやめてしまう人もいるようだ。
 後半にしても不完全燃焼の感は否めない。例えば「フェミニストはなぜ嫌われるか」という分析など、もっと深めてほしかった。フェミニストたちのミスコンテスト批判、売買春を巡る議論への反感があったことについてさらりと触れただけで、すぐ「フェミニズムが嫌われるうえでメディアが果たした役割」へと移ってしまったあたり、少なからず物足りない。従来のフェミニズムが展開してきた論の弱さをこそ、きちんと突いてほしかった。
 また、階級の存在に触れ「女女格差」について話しているにもかかわらず、「専業主婦」という言葉が若干あいまいに、また乱暴に使われているのが気になった。税制上、優遇されている「専業主婦」が、夫の所得が高く恵まれた無職の層と、夫の所得が低いパート層に二分されているのは、瀬地山角が『お笑いジェンダー論』(勁草書房)で指摘している通りである。配偶者控除の見直しが始まり、将来的に年金の第三号被保険者制度も変わることが予想される今、このあたりは対談とはいえもっと慎重に、2人がどう「専業主婦」を定義するのか、というところを明らかにすべきだったと思う。
 ともあれ、日本のフェミニズムをある角度から切り取った痛快な対談集である。苦悩しつつも対談者2人はフェミニズムに絶望はしていない。好き嫌いは分かれるにせよ、「これからフェミニズムはどうなるのか」と問題提起する意味は小さくない。
 それにしても、この本の書評をあまり目にしないのは不思議だ。話題性からしてもメディアはこの本をもっと取り上げてよかったのに、あげつらわれる人物たちへの妙な遠慮があったのだろうか。
(MY)


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