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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
水城せとな著『失恋ショコラティエ8』小学館 2014年

 女性誌のマンガ特集におススメ本として常連のマンガだが、なかなか読む気がしなかった。「失恋」「ショコラティエ」、そして今どき珍しいともいうべき少女漫画の王道をいくカワイイ系の絵柄。よく言えば、疲れたときに手っ取り早く胸キュンするのに最適…、悪く言えば、脳みそが溶けていくようなおバカなマンガだろうと思っていたからだ。しかし、DVも描かれているらしいと聴くや、DV被害者事件専門弁護士を自認する私も読まねばと義務感で読んでみた。
 おお。おみそれしました!単細胞の「片思い胸キュン」「両想いらぶらぶ」?と言った白けた予想は気落ちよく裏切られる。非常にクールな恋愛論を読むようだ。恋愛は打算や計算ずくで、醒めたらその相手は「存在しない人と同じ」(サエコ)になりうる(それも、そのうちそう言うサエコが爽太にとって「存在しない人」となるだろうという皮肉な暗示もある)。恋愛を真摯なものであるべしと考えている薫子は恋愛下手で、爽太を頼って転がり込み早速セックスしたサエコに「本当に好きっていうのではない」と反省を迫ろうとしたら、逆に「本当に好きって何ですか」と問われて絶句する。「この女、気持ち悪い。いや、自分も気持ち悪い。」恋愛は、思い込みや打算、妄想の気持ち悪い産物。ほ〜。おっとこれは7巻だった。
 美しくて性格も良いえれなを裏切ってサエコとセックス三昧の爽太にマジむかつく7巻(その上、一番共感できる薫子までサエコを恋愛勝者として見習うようになっておいおい…)を経て、8巻に入るや、爽太は舞い上がってハッピーなのではなく、サエコが夫(のDV)から避難するのにちょうどいいから自分を頼っただけとわかっていて、憂鬱となっているので、納得できるように。サエコを思慕し妄想しているだけだった6巻までに比べて、8巻は重苦しい。抱いているときのほうが、一人で妄想しているときよりも、孤独。後書きに、ネタバレになるので映画のタイトルは書かないとしながら、ある映画が紹介されている。−文字通り恋に狂って、文字通り破滅する。あまりに大きすぎる代償を支払い、全てを失った男が、数年後、その相手だった女がほかの男といるのを見かける。男は思う。「普通の女だった。」−うわ〜、すごい寂寥感。
 とはいえ、薫子(一見クールなようで一途、自分でも「夢見がちなまま34歳になってしまったんですかね」と思う彼女が友人にはイチオシと思うが、恋愛には向かないのか…)に語らせたセリフも、一理ある、と作者は思っているのだろう。年下の関谷が恋愛を面倒と言うのを聴きながら、薫子は思う。「正直、恋愛めんどくせとかいうより、好きな人に夢中になって頑張っちゃっている男の方がステキだよね…」
 皮肉がたっぷりきいた恋愛論が展開されていると思うのだが、女性誌などは、「モテるテクニックをサエコに学べ!」といった取り上げ方をしている。何だか、ブラックジョークのようだ。それとも、そういった女性誌も、読者に、クールであれと勧めているわけか。
 それにしても、DV被害を受けても、サエコは法律相談に行こうと思ってくれないのか…。不貞する前に相談にきてくれないと、有責性ガチンコで不利になるのに…。男に依存して懲りたはずなのに別の男に依存するのか…。勢いでセックスしているけど、お店の上の控室みたいなところに、コンドームを用意していたのか?妊娠したようだけどその子はどっちの子だろう、嫡出否認とか修羅場だ…。などと、胸中に心配が渦巻く。離婚弁護士は、や恋愛マンガの最悪の読者なのだろう。(良)
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