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竹信三恵子著『ルポ 賃金差別』筑摩書房 2012年

 同じ職場で働いていても,性別が違うから・コースが違うから・派遣だから・嘱託だからetc.で賃金に差がつけられる(賃金の差は年金にも影響する)。まさに差別だ。筆者は取材先の男性社員から憤然と言われる。「仕事はできるものの勝ちだ。だから賃金の差別は格差であっても,差別ではない。人間はそれぞれ出来が違うのだから,格差はあって当たり前。」だが,「女性は家族を養わないだろうから・結婚で辞めるだろうから」etc.は「仕事の出来」の違いではない。異なる賃金体系を最初から押し付けられているのは,「出来るものが勝つ」のが当たり前の世界ですらなく,やはり差別としかいいようがない。
 賃金差別はおかしいと声をあげ裁判で闘った多くの方たちの実践には頭が下がる。職場で一層パワハラがひどくなる中でも闘い続けることはどんなに大変だったことか。司法はその訴えに必ずしも真摯に応えたとは言い難い。それでも,そのような取り組みの成果は着実にあった。
 日本では女性を「家事や育児の片手間」の「周辺的な働き手」と差別してきた。女性への差別の「実績」は今や,若者,さらにはかつては「一家の大黒柱」とみなされた年齢層の男性にも応用され,非正規労働が激増している。非正規労働者は,契約打ち切りを恐れて賃金交渉すら自主規制してしまい,賃金を下げられても文句も言えない。かくして貧困が深刻化する。
 正規労働の労働者は「下がいる」との差別意識でひそかに安心を感じていられるのだろうか。いやそんなことはない。働きを正当に評価される物差しがないと,働くことに対し及び腰でしか向き合えない社会になってしまう。コンサルティング会社(タワーズペリン)の2005年の調査で,「仕事に対して非常に意欲的」との回答者は,日本は調査対象の18カ国中最低の2(!)%にとどまっているという。賃金差別は社会全体をむしばむ。
 震災に便乗した更なる規制緩和要求も繰り広げられている。だが,被災地でも,細切れの安い仕事が望まれているのではない。経済的に自立できる安定雇用が切実に求められている。
 公正な賃金決定のための方策づくりが今こそ求められている。企業,政府関係者,そして法曹も,読むべき一冊である。               (良)
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