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村林新吾・相可高校調理クラブ著『高校生レストランまごの店 おいしい和食のキホン』岩波ジュニア新書 2015年

 三重県多気町にある、調理師を目指している高校生たちが運営する、「まごの店」。相可(おうか)高校食物調理科のための研修施設で、土日祝日のみ開いている。本著では、同店で高校生たちが昔から伝わる料理のキホンを仕込んでつくった料理の数々が披露されている。
 一番だしをとる、煮干しだしをつくる、うどんのだしをつくる、ごはんを炊く…という「こだわりの基本」から、タイを三枚におろす、鶏肉をさばく…といった「調理の基本」、薄刃包丁の使い方といった「調味料と包丁」、だし巻き卵、肉野菜炒めといった「基本料理」、調理クラブ3年生ひとりひとりの「私の一品」(ポトフ、治部煮、カツオ茶漬けetc.)、2年生部員ひとりひとりの「お弁当」(いつもは家族が作ってくれているが、頑張った!)、朝5時に起床し6時15分には高校に到着して準備を始めるという調理クラブ部長の「まごの店」営業日のスケジュールなど、たんたんとつづられていく。あまたある華やかなレシピ本に比べ、紹介される料理自体、とてもとても地味だし、料理の写真もテカテカしてなくて、とっても地味で、それだけではおいしそうかといわれると正直ビミョーではある(テカテカした写真に慣れ過ぎなのだろう)。
 でも、うん、一所懸命な高校生の姿って愛おしい。いつかは調理師になりたいと頑張っていることが伝わってくる高校生の部員たちの顔を眺めていると不覚にも涙が出て来る。弁護士という仕事柄、JK(女子高生)といえば、つい、ばっちりメイクして、ある種のガードをして必死にサバイバルしようとしている子たちを思い出す。そんな私にとっては、「自眉半分落としてつりあげて長く描いている眉毛でないっ」、「まつげエクステしてないっ」「タトゥーしてないっ」といったレベルで、そういう「ガード」をしなくていい、素顔でいい子たちなんだな〜というレベルで涙が出る。ああ〜っ、うん、こんな穏やかそうな彼らが作った料理はおいしいに違いない、と確信する。
 部員の「私の好きな料理」というコラムがまた、とてもとてもいい。両親が居酒屋を経営していて、子どものころからいっしょに食事をとることがなく、兄弟と祖母と食事をしていたが、たまにある休みの日に母がつくってくれる牛丼は、地元の伊賀牛を使い、玉ねぎなどはなしのシンプルなものだったけれども、心温まるものだったとか。そうだね、それは美味しかっただろうね、と目を細める。「だし巻き卵です。理由は、私が小学生のときに親戚の家で食べただし巻き卵が、とてもおいしかったからです。(略)だし巻き卵は1年生のときから練習します。しかし、私はほかの人より上手に焼けませんでした。それでも私はあきらめずに練習していました。ある日、いつものように練習していたら、とてもきれいに焼けました。努力が実って、とてもうれしかったです。それ以降、だし巻き卵は得意料理になりました。だし巻き卵は好きな料理であって、また得意料理です。」なんだか、作文としてはこなれているとは到底いえないものなのだが、いやだからこそ、「そうか、うれしかったんだね!」と胸にぐっとくる。
 焼きそばの麺はほぐし過ぎない、ぶつぶつ切れて美味しくなくなる。ある程度焦がして焼く、といった「おお、そうなのか!」というためになるコツもあり、レシピ本としても使えそうだ。(良)
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