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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
津村記久子『アレグリアとは仕事はできない』筑摩書房 2008年

 アレグリアとはある地質調査会社で使われているプリント・スキャナ・コピーをする複合機。このごろの会社はこのような機械なしでは動かない。そこに中途採用されているミノベという女性と彼女がトチノ先輩と呼ぶ若い女性、さらにその機械をメンテナンスするサポート会社の男などアレグリアを中心に働く「労働者」のイライラした閉塞感を乾いた文章で描く。機械との相性はあるとたいていの人は思っている。その感覚が上手に文章化されている。このアレグリアは性悪で、納期間際の忙しいときに限って「ウオームアップ中です」と休止してしまう。そのくせ社長の前でせっせと働いたり、アフターサービスのスタッフがやってくると急に動き出したりする。まったくやってられないぜ。働く人々の呻きはいつか突然思いがけない形で暴発する。
 人名が全てカタカナ表記であるのが無機質・無個性な現代社会をうまく表している。「労働からの疎外」というふるい言葉を思い出してしまった。
 同時に所収されている「地下鉄の叙事詩」は、通勤時間の地下鉄内の女子高生をねらう痴漢、それに気がつく大学生、女性etc、満員電車の中のそれそれの立場での想念がやはりカタカナ表記の人々によってつぶやかられる。女子高生の必死の反撃はどうなるか。現代の善意、コミュニケーションがどんなものであるか。さまざまな解釈ができる掌編ながら濃い小説。
 この作者の作品は何を読んでも外れない。(巳)
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