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千田有紀編 『上野千鶴子に挑む』勁草書房 2011年3月

 上野千鶴子がこの3月に東大を退官した。上野研究室の長女を自認する千田有紀は, 指導学生による退官記念論文集は?という提案を上野に「いやだ,そんなダサいの」と否定され,ならばと「指導学生が師に挑む」,エキサイティングな企画を実現した。
 上野研究室を巣立った16人による15の論稿は,多岐にわたる。「『対』の思想をめぐって」「主婦論争の誕生と終焉」「男性学の担い手はだれか」「表現行為とパフォーマティヴィティ」「消費社会論からの退却とは何だったのか」,「対抗暴力批判の来歴」「日本のポストコロニアル批判」「ポスト『家族の世紀』の『おひとりさま』論」…半数のタイトルを挙げても(さらに本著で取り上げられなかった上野の業績もあるという!),上野がいかに幅広い分野に取り組んできたか,そして何よりアカデミズムの中に留まらず,論壇,商業誌,運動等,「マルチリンガル」な文体を駆使して活躍してきた稀有な人であるかに感嘆する。
 師の業績を讃えるのではなく,指導学生たちは,師のアキレス腱を見つけ出し,叩く。あるいは師が読ませたくない古証文とする論稿を読み込み,再評価する。そこまで叩かなくても…とはらはらする論稿も含め,一つ一つに,上野は丁寧に応答する。
あっさりと批判を認めつつも論者に問いを投げ返す,未だに解かれない問題を提示する,当時の論争の状況を解説する…。幾多の買わなくてもいい喧嘩を買ってきただけであって,上野はやはり攻撃への対応がうまい!芸の域に達している。師と学生の絶妙なコラボに,上野研究室の活気が彷彿とされる。執筆者の一人朴姫淑が述懐するように「上野ゼミは恐怖と緊張の連続」「何となくサディスティックで,マゾヒスティック」でもあったはずだ(笑)。でも,師に果敢に挑戦しようとする指導学生たちは,上野の訓練をしかと受け止め,そして根底において上野を尊敬している。上野もまた巣立った指導学生たちに感謝し,このコラボの機会を楽しんでいる。全編にあふれる師弟愛に胸が熱くなるほどだ。
 最後に収められた千田由紀による上野のインタビューには,若干寂しくなる。フェミニズムの問題は多々あるのに,意識されなくなり,社会学でもジェンダー部会はゲットー化。運動とかい離していく女性学…。上野は千田らに,怒りを出す芸達者になれ,大学という井の中の蛙にならず,エンタメ系ほか遠いオーディエンスに届くようなメッセージを送れと,発破をかける。確かに,「フェミニズム=上野」という記号にいつまでも頼れない。頑張れ,師を乗り越えろ。…と,第三者的にいうのは,上野的には正しくなかろう。私自身,「芸を磨くぞ」と引き受けなくては。                 (良)
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