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自民党の憲法草案を爆発的にひろめる有志連合『あたらしい憲法草案のはなし』太郎次郎エディタ社 2016年

 そうか、こういう本の作り方があったんだ。「目から鱗」である。
 2012年4月に発表された自民党の憲法草案の解説書である。憲法の条文なんて読む気がしないのが普通である。だが、まさかと思っていた憲法改正が足音高く近づいているとき、読まないで議論したり投票したりするわけにはいかない。この小冊子が現在の日本国憲法が発布された時に文部省が国民を啓蒙するために発表した『あたらしい憲法のはなし』(本書巻末に一部収録)をもじっていることはすぐにわかる。「はしがき」によれば、できるだけ草案を作った人々の気持ちに寄り添い、改正の意図が不明なときは、自民党が出している資料を参考にし、それでもわからないときは起草者の身になって考え、言葉を補ったとある。つまり「自民党になりすまし」て憲法草案をわかりやすく丁寧に解説したものである。
 どこが改正のポイントであるかが明白に示されている。すなわち憲法草案の3原則は「国民主権の縮小」「戦争放棄の放棄」「基本的人権の制限」である。
 「前文の主語が<日本国民>から<日本国>に変わります」「天皇が<元首>になります」「国旗と国歌を尊重する義務が生じます」「西暦より元号を重んじてもらいます」
 え?うそ!?と思ってしまうが、ちゃんと草案にはそう書いてある。
 昨今、問題になっている「立憲主義」についてはこう解説している。「立憲主義はすべての国の憲法に共通した原則です。しかし、あたらしい憲法草案では、この原則が逆転しました。<全て国民は、この憲法を尊重しなければならない〈102条〉>。世界じゅうの憲法で、こんな条文をもつ憲法はほかにありません。ですので、憲法学者をはじめ、多くの人が<それはまちがっている>といいました。ですが、みなさん、それは日本ではなく、他の国がまちがっているのです。……草案の102条は国と民が一丸となって、よりよい国をつくろうというねがいがこめられているのです、これが日本独自の、日本の歴史と伝統をふまえた、日本式の<立憲主義>なのです。憲法学者なんかのいうことをきく必要はないのです。」
 またもや国際社会における孤立の道を歩もうとしているのである。
 締めくくりはこうである。
 「自民党の人たちは強い意志と覚悟をもって、この草案をつくったのです。みなさんも、二度と引きかえせない道にふみだすのだ、というかくごで、よくお考えください。勇気を持って憲法を改正すれば、みなさんも<強く美しい国>の一員になれるのです。」
 そうなのだ、引きかえせない道なのだ。覚悟してよく考えなければならないのだ。  「自民党なりすまし」が、書いているので自民党がかくしていることもズバズバ明らかにしている。
 表現の自由はまっさきに規制されるでしょう。……非常時にはそれくらいの不自由をがまんして、国の命令に従うのが国民の責務ではありませんか。」
 「民主主義は平和の時はいいかもしれませんが、非常時にはじゃまなだけで、ひとつもいいことはないのです。」
 「大地震などの自然災害の時は、国民がパニックになりやすいので、強い力を使って、国民をおとなしくさせたほうがよいのです。」

 こんな憲法に変えたほうがいいと思う人がいるだろうか。
 今年の夏は暑いといわれている。この本を読んだら寒くなること確実。(巳)
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