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伊東滋夫編『家事事件の要件事実』日本評論社 2013年3月

 「要件事実」・・・法曹関係者や法学者にとっては基本用語であるが、一般の読者には全く馴染みがない言葉であろう。本書は、ある程度要件事実について知識を持つ読者向けであり、特に家事事件を扱う際に疑問を抱いた経験のある方にとっては非常に面白い内容だと思う。
 かくいう私もその一人。司法研修所で徹底的に要件事実の勉強をして実務家になり、民事事件の訴状も作成してきた。しかし、離婚事件の訴状はどうやって書いたらいいのか、さっぱり分からない。民法770条1項各号の離婚原因の要件を書くだけなら、1頁で終わってしまう。でも、先輩方の訴状を見せていただくと、どれにも具体的な事実が細かく記載されているため(しかも、人によってその程度も異なる)、見よう見まねで何とか作成してきた。また、実際の家事事件においては、裁判官の後見的判断や裁量に結論が委ねられることも多く、スッキリしないもどかしさを感じることも度々であった。そのような経験を経て、「家事事件は、民事事件の要件事実論がそのまま妥当しない」との結論に達し、それ以上思考を深めることなく現在に至る。
 本書は、家事事件に要件事実論が妥当するかについて、学者や実務家がそれぞれの立場から論じ、意見を交換しあったものである。大きくは、学者と実務家で見解を異にするが、同じ学者、実務家であっても、各人によって捉え方が異なることも面白い。個人的には、やはり家事事件全般に要件事実論を当てはめるのは無理だと思いつつ、裁判所の裁量的判断を少しでも客観化、明確化するためには、このような議論も有意義だと感じた。
 非常に細かく分析がなされているため、家事事件に取り組みたい方、または要件事実について改めて勉強したい方には、お勧めの書である。なお、本書は議事録から始まり、その後に問題提起論文・報告論文と続くが、前者は、後者の論文を前提とした議論であるため、後者を先に読まれる方が理解しやすいだろう。(渕)

<目次>
1 家事事件要件事実研究会 議事録
2 問題提起論文・報告論文
  問題提起論文
  「家事事件と要件事実論との関係についての問題提起」伊東滋夫
  報告論文1
  「家事事件における裁量とその統制のあり方雑考
    −裁量統制の手法としての「要件事実」論の意義」山本和彦
  報告論文2
  「家事事件における要件事実の機能−手続き保障の観点から」垣内秀
  介
  報告論文3
  「当事者から見た家事事件における要件事実」杉井静子
  報告論文4
  「家事事件における裁判所の役割」近藤ルミ子
3 家事事件要件事実研究会を終えて・家事事件要件事実研究会を傍聴し
 て
  家事事件要件事実研究会を終えて1  伊東滋夫
  家事事件要件事実研究会を終えて2  山本和彦
  家事事件要件事実研究会を終えて3  垣内秀介
  家事事件要件事実研究会を終えて4  杉井静子
  家事事件要件事実研究会を終えて5  近藤ルミ子
  家事事件要件事実研究会を傍聴して1 金子修
  家事事件要件事実研究会を傍聴して2 今出川幸寛
4 要件事実論・事実認定論関連文献
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