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『マーガレット・サンガー』(エレン・チェスラー著・早川敦子監訳・日本評論社)

 「子どもを産む・産まない/いつ・何人産むか」は女の権利。このことが実現するためにはまず身体に安全で確実な避妊具の開発・普及が必要である。が、もっと重要なのは「性」に関する意識改革である。このことが現代において、十分であるかといえばそんなことはない。たとえば望まぬ妊娠の結果の中絶は日本でもまだまだ多い。そしてアメリカでは中絶を行う医療機関が「神への冒涜」としてプロ・ライフ派から襲撃されたりする。
 性道徳が解放されているといわれる今でもそうなのだ。マーガレット・サンガーが活躍し始めた100年前であれば、「女性が自分の性を、自分でコントロールしなくては、真に人間らしく生きられない」と主張し、実際に避妊具の普及に力を尽くした彼女にどんなに非難が浴びせられ、妨害を受けたかは想像に難くない。
 性的自立に関する女性の最も根源的な権利の獲得にとって、マーガレット・サンガーの名前は忘れることはできない。
 「産児制限は、わいせつという間違った世論によって退けられてはならない」「女性が自分の身体を知る必要がある」。現在でも通用する言葉である。彼女自身が自分の家族を破壊するほどの強く激しい信念に基づく行動をこの400ページに近い労作は余すことなく語っている。しばしば自分の仕事を助けてくれる男性と恋に陥った彼女の人生は華やかであり、また当時の社会主義との交流も複雑多岐で、まさに激動の時代を生き抜いた女性の像が立ち上がってくる。
 彼女は死の床で、孫から死後どのように語られたいかを聞かれて、こう答えたという。「女性は未来の力だから、女性を助けたことで人々の記憶に残りたい」。本書はマーガレットの遺志を実現したものといえる。
 医師の対馬ルリ子の「自分で考え、作っていく健康――リプロダクティブ・ヘルス/ライツ」と評論家加藤タキの「母、加藤シズエを語る」が収録されており、サンガーの87年にわたる略年表がついていて便利である。

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