判例 女友だち 映画ウォーキング 情報BOX わがまま読書 リンク おたより欄
わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
『石狩町女性史年表――町内資料に読む』(駒井秀子編・自然食通信社)

 年表を出版する手伝いをしたことがある。その作業の気が遠くなるようなしんどさを思い出すと、石狩町という限られた地域の女性史とはいえ、明治初年から1988年までの120年の歴史の洗い出しはどんなに大変だったかと思う。しかもこれは、特に歴史学者というわけでもなく何かの組織に属しているオーソリティでもなく、駒井さんという市井の人の単独作業である。この点を駒井さんは次のように言う。
 「私の視座とはつまり、道南の寒村の漁民がその後都市の小商人となった市民階層の末、地場・産直・安全とはいえ潰れかかった八百屋と市民運動のボランティアと身分不安定な非常勤講師と、その合間に女性史年表を作ろうとしている立場位相」を指す、と。
 3つの要素から成る。1つは石狩町の女性の歴史、2つは関連事項として、国内・国際動向、3つは石狩町町内年表に関連する資料からかなり長めの引用を行っていて、ここは独立して読めてとてもおもしろい。
 びっくりするのは、明治2年「武藤ハツ(石狩ではじめて生まれた女性)の娘ナヨは、この年の両親の離縁によって漁師山田定吉・ナカの養女となる」のように固有名詞が出てくることである。固有名詞を出すことは、「無名の女性」とひとくくりにされてきたことに対する今までの歴史叙述への批判と思われる。「できる限り多勢の町民女性に直接参加」してもらうためと、ある。また、昭和14年には「川上きよの(大正8生),この日5女を出産し同日不慮の事故により夫を喪うが…」という記述があり、1人の女性の人生が立ち上がってくる。さすがに近年の部分にはそのようなプライベートな記録は見られないが。
 地域女性史は盛んであると聞く。そのようななかでもこのような労作は少ないのではなかろうか。民間には実にスゴイ人がいるものである。

Copyright(C) 2001 GAL. All Rights Reserved.
 
TOP BACK