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レナ・K・ゲリッセン/ヘザー・D・マカダム『レナの約束』中公文庫 2011年

 辛い・怖いと思いながらも、アウシュビッツからの生還者の記録(ユダヤ系ポーランド人のレナからの聞き書きをアメリカのフリーライターであるヘザーが小説風にまとめている)を読む。
 3年もの間、アウシュビッツで、殺される側に選別されず病死もせず、親衛隊や看守の機嫌次第で撲殺されたり銃殺されたりせずに、連合軍に解放されるまで、極悪の生活状況の中で激しい労働をしながら20歳のレナが生き延びたのは奇跡的である。後から送りこまれてきた妹と生きて家族と再会することを心の中で両親と固く約束したレナが、すべての体力・気力・勇気・知恵を総結集して過酷な条件の中で危機一髪の危険をかわして生きてゆく。生と死の分かれ道は日常的にあり、それは一瞬の判断にかかっている。
 午前4時。「ラウス、ラウス(外へ出ろ)!」の掛け声で1日が始まる。人間の焼ける匂い、ガス室から立ち上る煙。絶え間ない怒声と悲鳴。銃声。不衛生なトイレ。シラミやノミの跋扈する小屋。その中でレナはちょっとでも人間的な看守を見極め、その下で働くように動く。そして絶対に妹から離れないように万全の注意を払う。そしてもし見つかればたちまち殺されるという危険を冒して収容所の男性とコンタクトをとり、パンや薬を手に入れる。このような闇ルートがなかったらレナやその妹は病気や栄養失調で命を落としたに違いない。
 レナは悲惨な環境の中でも多くの女性のように生理が止まらなかったという。衛生用品がなにもない中どんなに苦労したことだろう。その一事をもってしても胸が痛くなる。解放されて50年後のインタビューだが、レナの記憶は実に細かく固有名詞を含めて具体的である。多分記憶はあちこちに飛んでいたのではないかと思われるが、それをこのような体験記に纏め上げたヘザーの手腕もすばらしい。
 レナの生活を克明に描かれていることによってナチスの非道を浮かび上がらせている。アウシュビッツ生還者の女性の体験記として唯一のものであるという。(巳)
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