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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
近藤聡乃著『A子さんの恋人@』株式会社KADOKAWA 2015年

 「英語の英と書いて英子です」と説明したら、「英語のAと書いてA子です」と受けとめられて、「A子」と名前をマグカップにしっかり記入されてしまう。しかしなんだか妙に落ち着いたA子さんは、10年来の友人であるが漢字を忘れてしまった「けいこ」と「ゆうこ」におそろいで「K子」「U子」の名前入りのマグカップをお土産に渡す。3年間のニューヨーク滞在のあとのお土産だが、ニューヨークで買ったものではなく、A子が「行ってみたかった」という東京スカイツリーで買ったものという冒頭から、アラサー女子(みな29歳、彼氏らも29歳)のゆるい「あるある」話や、くすっと笑える毒のあるユーモアに期待がもてる。
 A子は美大生のときからつき合っていたA太郎をふるつもりがふりそこねたたまま渡米。3年間の渡米中一度も連絡を取らなかったから縁が切れたと思ったら、K子とU子を呼んだ自宅での鍋の会にA太郎がなぜか参加し、A子よりくつろいでしまっている。一方アメリカにも性格が悪いながら頭はよく懐は深い恋人A君を置いてきている。というと、ドロドロした愛憎劇の三角愛を期待する向きもあろうが、全然違う。A太郎もA君も、A子より数枚上手、A子が右往左往するのを面白がる余裕があり毒もある。細くて薄い線で描かれているのに、「なんで僕がえいこちゃんのことを好きなのか、教えてあげよう。それは君は僕のことそんなに好きじゃないからだよ」、「えいこちゃんのあの疑わしそうに僕を見る目とか、い〜〜んだよね〜〜〜」などのせりふを吐くA太郎など、A子が「この人なんか変だ。別れなければ」と思いながらもペースに引き込まれてしまうのもわかるうっすらした不気味さを感じさせるのが巧い。
 できる女かついちばん心が美しいのにいちばんもてず、正月から「ひとり神経衰弱」をするけいこや、「おおらかで心のきれいな彼氏」に「現実にこんな人が存在するんだ…」と落ち着かないゆうこ、さらには、美大の同期でA太郎を好きになるもこっぴどいことを言われてふられ、そのA太郎がなぜA子とつきあうのか納得がいかず、FacebookやTwitterでA子らの動向をつかもうとする「自分を下の名前で呼ぶ」あいこなど、それぞれこんな友だちいるような・いないような…と思わせる、存在感たっぷりのキャラクター。
 端的には説明できないけれども、癖になるこの面白さ。アラサーの女子校ノリというか。間違いなく、2巻も買うつもりだ。(良)
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