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自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合会著『あたらしい憲法草案のはなし』太郎次郎社エディタス 2016年

 「自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる」!?天賦人権説を否定するあの改憲草案を「批判する」、ではなく、「爆発的にひろめる」って、どういうこと!?
 著者名でいわゆる脊髄反射的に反発したおのれが恥ずかしい。まずは知ってもらわないと、批判も,そして賛成もできるわけがないのだ。だいたい、「自民党の憲法改正草案を批判する/非難する/撃破する/に決して屈しないetc.有志連合会」といった著者名あれば、私のような既に日本国憲法を護りたい、自民党の改憲草案を危険すぎると既に認識しているしか手に取らない。私はといえば、アツく「憲法の根本的価値は個人の尊厳なんですっ。それを忌み嫌う憲法改正草案の危険をみなさんわかってくださあーい!!」という筋金入りの護憲派、ん十年前の中学生のころには、「たいへん長ったらしく、また、わかりにくい文章で、みなさんも「変な日本語だ」と思われたことでしょう」(本著10頁)とdisられがちな前文が大好きでそらんじてもいた。本著が刊行されたときにはまだ両院で「改憲勢力」の議員数が3分の2以上(憲法改正発議に必要な議員数割合)とはなっていなかったが、現時点では3分の2以上といわれる。そんな時代には、一刻も早く「自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる」必要があるっ。
 著者である自民党の憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合会(自爆連)は、改正草案をつくった人(起草者)ではないが、「できるだけ草案をつくった人びとの気持ちによりそい、そこにこめられた理念や内容をつたえたいと考えました」とのこと。
 憲法に関心がある人ならタイトルでぴんとくるはずだろうが、これは日本国憲法が公布された後の1947年11月に、文部省(当時)が中学1年生向けの社会科教科書として発行した『あたらしい憲法のはなし』のパロディである。タイトルだけでなく、「ですます」調、「みなさん」という語りかけ方など、文体もそっくりまねている。しかし、内容は全く反対。パロディという形式が、日本国憲法と自民党改憲草案が全く対称的な内容であることを際立たせる。
 たとえば…。
「民主主義も国民主権も、たいせつな制度です。けれども、主権者である国民はなにをしてもいいというわけではないのです。主権があるからといって、すべての人が自分のわがままをとおそうとしたら、国はめちゃめちゃになってしまうでしょう。(略)そこで、あたらしい憲法草案では、国民がまちがった考えをもたないよう、自分だけがえらいと思わないよう、国民主権について、考えなおすことにしたのです。」
 具体的には、前文の主語が「「日本国民は」となっているもため、国民は自分たちがたいそうえらいものであるかのように錯覚してしまいます。そこで、あたらしい憲法草案では、前文がそっくり書き直されました。(略)主語が「日本国民は」から「日本国は」に変わっています。これは国民を必要以上につけあがらせてはあいけない、という考えによるものです。主語が変わったことで、国の中心が「国民」ではなく、「国」そのものであることがはっきりします。
 また、この前文には、日本が長い歴史と伝統と文化をもつりっぱな国であること、みなの尊敬を集める天皇をいただく、世界でもめずらしい、すばらしい国であることなどがしるされています。こんな前文ならば、国民もしぜんと国を愛する心をもつようになるでしょう。」
 国政のよりどころがあらかじめ「国」そのものではなく、国民にあることをうやむやにしてしまう。また、ひとりひとりを尊重される存在とはみなさない。その代表たる議員からなる国会が多様な意見を考慮し熟慮し話し合っていくという民主主義の価値も認めない。痛めつけられやすく、大きな声を出しにくい少数派の声もくみ上げるという気配もない。マジョリティと違う意見を言おうものなら、尊重されマジョリティの意見に基づく政策を修正するのではなく、「まちがった考え」だと退けられ、「わがまま」で、「つけあがって」いると誹られそうである。
 そしてまた、どの国でも、それぞれの文化がある。その文化は単調なものではなく、地域ごとに多様性があり、他の国、地域からの影響も受けさらに豊かになっているはずだ。日本だけが「世界でもめずらしい、すばらしい国」なのではない。嫌韓反中本ブームのあとにブームになったといわれる日本礼賛本のような改憲草案のフレーズに苦笑するしかない、いや苦笑している場合ではない。
 この調子で、ツッコミと苦笑を続けるしかないまま、一気に読み終えられる。憲法24条の部分はないけれども、自民党改憲草案のあの24条部分にびびりまくり、改憲阻止の運動をせねばっと思っている私としては、改憲草案の24条部分も爆発的に広めるべく、こののりで何か書こうかな?まんまパクリだが、いやこれもそもそも「あたらしい憲法のはなし」のパクリだからいいか、などとにやにやする。しかし、是非、多くの人に読んで頂きたい。とまとめようとして、ん…とフリーズ。参院選で改憲勢力に3分の2の議席を取らせた有権者たちは、苦笑するのではなく、「だよね…」とうなずきながら読むのではないか、ひょっとして。24条パロディ本をつくっても、「ぞっとする」のではなく、「合点だ」となりうる…?うーむ…。いや、ここであきらめてしまったら、「たくさんの国民がまちがった考えをもってしまったら、国の将来はたいへんなことになってしまいます」という改憲草案の起草者(になったつもりの自爆連が書いているのだが)と一致してしまうではないか。あきらめない、あきらめられない。(良)
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