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『ジャスミンを銃口に』重信房子歌集 幻冬舎 2005年

 重信房子。70年代、80年代この名前は全世界をかけめぐった。
 1971年、重信25歳のとき、パレスチナ解放闘争に参加するためにひとりで日本を発った。それからの彼女は、『日本赤軍の兵士』としてアラブの地で革命のリーダーとなっていった。その彼女がひっそりと日本に帰国、逮捕されたのが2000年の秋だった。いま彼女は東京の拘置所にいて、裁判の結果を待っている。
 重信が拘置所から弁護人大谷恭子に日記を記すように短歌ダイアリーを送るようになったという。すでに3500首以上になる歌から257首を大谷が編集したのがこの歌集である。題名から明らかなように、ベイルートでの戦いの歌から始まって、家族、子どもの頃の思い出などが素直に歌われている。
 戦いの激しさを歌う歌は、彼女でなくては絶対に歌えない歌だ。
「すでにもう街には棺はなくなりて布一枚で地に還る友」
「友のため樹林葬の樹オリーブの苗を捜して戦場駆ける」
 インターナショナルを青春の歌として育ったものには次の2首は胸に迫る。
「1本のロウソクのもと肩を組みインター歌いて戦場に赴く」
「インターは一人歌えばなおさらにさびしきものと独房で知る」
 そしてこんな桜の歌を歌う重信は、日本人だと思う。
「夜桜のしじまの時の激しさよ獄で逝きし人々のこと」
「風に舞う桜吹雪のひとひらの房に届きて春に触れたり」
 イスラエル・パレスチナの戦争は多分、日本人の歴史知識の欠落部分であろう。章末についている大谷恭子執筆の解説は簡潔ながら、歌の鑑賞をするには十分な知識を与えてくれる。とくに重信が戦いの中で失った同志に関する解説は、短いが哀切な追悼文となっている。
 戦後60年の夏。心静かに読んでみたい歌集である。
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