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岡野八代編『自由への問い7 家族―新しい「親密圏」を求めて』岩波書店 2010年

 フェミニズムは、家族を国家と市場経済に資する抑圧の装置であると喝破し批判してきた。他方、人々の生が営まれている現場である家族は、ケアの原理や主流から外れた抵抗の原理が生み出される場でもある。本著は、政治理論、社会学、女性学、家族法、フランス哲学等のバックグラウンドを持つ研究者・実務家による刺激的な論考により、両義性をはらんだ家族を論じようと試みている。
 家族法研究者の二宮周平氏の論稿「新しい家族が求める『自由』−家族法の視点から」は、近代的な法制度における家族とその変容を検討する。日本の家族法の問題は、当事者の合意を基本とするだけに、雇用における男女格差と家族内での性別役割分業の連関が当事者の合意というかたちで合理化されることにあるとの指摘は,鋭い。もっとも、女性の職場進出と家族の多様化は、性別役割分業型の婚姻家族を標準とせず、ライフスタイルに中立的な制度構築を推し進めている。法制度は、ライフスタイルに中立的であるべきであるが、他方、DVや児童虐待、高齢者虐待の防止と保護のため、公的介入が必要な場面もあることも忘れてはならない。家族が要保護者の保護を担う場でもあることを見据えて、今後の課題が検討されなければならないとして,いくつもの課題が検討されている。現行法で残る課題のひとつには、婚姻の選択の保障があり、具体的には、夫婦同氏制度(民法750条)、再婚禁止期間(民法733条)、婚姻が異性カップルに限定されていることである等の指摘は、重要である。
 弁護士の小島妙子氏の論稿「ドメスティック・バイオレンスが法に問いかけるもの−家族における個人の尊厳・自由の要請とその基盤−」も,二宮氏と同様,家族の成員一人一人の個人の尊厳と自由が要請される一方、他者に依存しなければならない者もいる家族のありかたに着目する。小島氏は,依存・ケア・責任の関係にある家族において、「自由」の貫徹が困難であることを指摘した上、DV・児童虐待・高齢者虐待という家族における暴力・虐待に対する法政策には、@人権(権利)アプローチ、すなわち家族の成員一人一人を人格の主体として把握し、権利を付与し、家族においても市民社会におけるルールを貫徹させるアプローチと、A福祉アプローチ、すなわち社会保障の施策等を通じ、家族における生身の人間の具体的な生の要求に応じるアプローチの二つのアプローチがあることを指摘した上、罰則付き保護命令制度を創設したDV防止法が人権アプローチが最も強く、高齢者の保護のみならず養護者への支援も法の目的とする高齢者虐待防止法は、人権アプローチが最も弱く、家族の再統合も目標とする児童虐待防止法は、裁判所の許可状に基づく臨検・捜索等を盛り込み被虐待児童の保護の実効性を高めるものの、その中間と分析する。この法的介入の手法の違いは、成人同士である夫婦、高齢者と子、未成熟子と親、という関係の内部でのケアのレベルが相対的に異なり、ケアのレベルが相対的に高い関係においては、国家の介入が抑制されるためであるとの指摘は,卓抜である。しかし、福祉アプローチは,社会保障の後退に伴い、後退を余議なくされ、家族内の暴力・虐待の解決を困難にしている。福祉アプローチを支える思想として、セン・アマルティア(インドの経済学者)の指摘する「潜在的能力」(例えば、適切な栄養を得ていること、自尊心を持ちうること、コミュニティーの生活で一定の役割を果たすことなど)に依拠して「自由」を支える制度的条件の整備が求められているとの指摘がなされる。
 このほかの論稿いずれもが興味深く、一読の価値がある。

目次
対論 新しい「親密圏」を求めて  岡野八代、加藤秀一

T考察 「公/私」の問い直しから
 消極的・積極的自由論の手前で  岡野八代
 新しい家族が求める「自由」―家族法の視点から―二宮周平
U問題状況 女性にとって「親密圏」とは
 「権利」意識と親密圏の自由   三輪敦子
 記憶と自由の予期―アメリカ史における黒人女性の語り―大橋 稔
 ドメスティック・バイオレンスが法に問いかけるもの―家族における個人の
 尊厳・自由の要請とその基盤―小島妙子
V構想 新しい自由の胎動
 自己尊重とはどのように形成される感情か―親密圏のなかでつむぐ記憶
 がもたらすもの―柿本佳美
 ジェンダー家族と生・性・生殖の自由  牟田和恵
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