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最高裁家庭局監修『家庭裁判所月報』第62巻第8号 2010年8月

 家裁月報の本号には,田中智子東京家庭裁判所判事による「親権喪失宣告の実情に関する考察」が寄せられている。
 子どもの虐待を防止し子どもを救済すべく児童福祉法及び児童虐待防止法は度々改正されてきたが,なお子どもの虐待は深刻な社会問題となっている。児童福祉法及び児童虐待防止法の平成19年改正法附則を受けて,親権制度の見直しを検討すべく法制審議会児童虐待防止関連親権制度部会において議論が続けられ,2010年8月,「児童虐待防止のための親権に係る制度の見直しに関する中間試案」が公表された。
  http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00014.html
 法制審では,親権喪失制度の見直しも検討対象の一つとしている。従前より,親権喪失宣告の効果が重大として申立て・宣告が躊躇され,活用しにくい制度となっていて,虐待を受けた子どもの保護のために十分でないとの指摘がなされてきた。子どもの福祉の観点から,要件・効果が見直されるとともに,親権の一時停止や部分停止の制度の導入も検討されている。もっとも,これまで親権喪失宣告等事件は公表されることが少なく,その運用の実情や課題の詳細は不明であった。
 田中判事の論稿は,平成20年・平成21年の全国の家裁で終局した親権喪失宣告申立事件及び管理権喪失宣告申立事件,親権喪失宣告取消事件を紹介し,運用の実情や課題,審理のあり方について検討するものである。たとえば,親権喪失宣告申立事件の審理期間は平均約4ヵ月間であるが,未成年後見人選任の見込みが立たない結果,審理に長期間要したと思われるものがあるといい,未成年後見人候補者拡充などの環境整備の必要を痛感させられる。コンパクトながら,基礎的かつ貴重なデータと示唆に富む考察がまとめられており,今後親権喪失制度に関する議論を進めていく上で必読文献となろう。
 このほか,本号には,審判例として,いわゆる医療ネグレクトに関する親権者の職務執行停止・職務代行者の選任申立事案,親権者の管理権喪失宣告事案が掲載されている。                         (U)

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