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矢尾和子・大坪和敏編『裁判実務フロンティア 家事事件手続』有斐閣 2017年

 教科書を出版する会社として知られる有斐閣としては、斬新なスタイルの家事事件についての実務書である。
 家事調停と家事審判の手続法である家事事件手続法は、2013年より施行されたが、その当時、東京家裁に在籍し、新しい実務の定着にむけて様々な検討を行っていた裁判官3名と、家事事件に深くかかわってきた弁護士5名により執筆され、物語仕立てで(架空の4ケースの事案の進行に沿って)、最新の家事事件実務を紹介する書である。
 やさしい一般書ではなく、弁護士、裁判官、家裁調査官、書記官、家事調停委員ら、家事事件を扱う、実務家・専門家向けであり、特に、初めて家事事件を受任する実務家には、具体的イメージをつかみつつ家事事件手続法を体系的に勉強でき、非常に(お世辞ではない)有用である。そして、初任者向けでもあるが、実務家がとるべき細やかな配慮、知っておくべき知識がちりばめられており、かなり「しっかりした」実務書である。
 また、家事事件では、裁判官が中心になって作る本、弁護士らが中心になって作る本が、別々に作られることが多い中、裁判所側(裁判所の内側)からみた実務、当事者の代理人(裁判所の外側)から見た実務がうまくミックスされ、立体的に手続きを疑似体験することができる点でもすぐれている。
 頁数のわりに情報量が多いのは、大変ありがたい。それはひとえに字が小さいことによるが、この点、あまり高齢者向けではない。定年退職後に就任された調停委員さんには、少し辛いかもしれない。字が大きく、情報量の少ない実務書がよく売れているのも見るので、こうした執筆者のたくさんのエネルギーが注ぎ込まれたお得な本を、応援したい。

 なお、ケースは次の4つであり、これらを読むと家事紛争のうち頻度の高いものはすべて習得したことになる。
1 子育てをまもなく終える比較的裕福な中年夫婦間の婚姻費
 用・離婚・財産分与等離婚給付をめぐる争い
2 7歳、5歳の子を連れて実家に戻った妻と夫との間の監護、親
 権、面会交流をめぐる争い
3 同族会社の大株主である会長(創業者の妻)が認知症になり、
 後見人が選任されてまもなく急死、株式をめぐるお家騒動と遺
 産分割紛争
4 前妻の子と後婚の妻間の遺言書をめぐる相続紛争

 なお、本には書くことが難しい実務や当事者向けアドバイスもたくさんある。あとは、経験の積み重ねで。            (富)
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