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佐藤文香監修・一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同著『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた―あなたがあなたらしくいられるための29問』明石書店 2019年

 2019年夏に読んだ一番エキサイティングな本である。

 まずこの著者の表記の仕方がすばらしい。指導教授の「手柄」とせずに多数の普通の学生が著者である、それも「ゼミ有志」ではなく「一同」というところがすごい。
 次に今の若い人・大学生の関心のありかがよくわかる構成になっており、それだけにいままでのジェンダー本とかなり違ったものになっていて、新鮮な衝撃を受ける。それは「ジェンダーのゼミを選んだ」ことで身近な人から問いかけられる素朴な疑問にこたえるという最初の目的の設定の良さとそれが成功していることの証であろう。
 具体的に言うと、もちろん解説の中には出てきているが、いままでジェンダーとか女性学の主たるテーマであった家族の問題、働く場における問題、性別役割分担が遠景となっていて、「セクシュアル・マイノリティ」や「性暴力」が圧倒的に前面に出ていることに如実に表れている。「萌えキャラ」とか「ジェンダー勉強したらイクメンになる?」みたいな発想はたぶん「おばさんフェミニスト」がなかなか考え付かないだろうし、さほど重要だと思わないと思う。このような問題を前面に出していることは、この本の主たる読み手である大学生・若者のニーズに見事にあっている。この踏ん切りの良さが本書の一大特色で、既存の枠にとらわれない自由な発想にあふれている。学生の関心を自由に思う存分のはばたかさせている指導力の柔軟さに打たれる。
 次に、この本は「ホップ」「ステップ」「ジャンプ」の3段階のレベルで解説をしている。入門書的装いをしながら、「ジャンプ」の部分はかなり専門的なところまで踏み込んでいて、なかなか「侮れない」本である。私の不勉強にすぎないとは思うが、「アセクシュアル」「インセル」などはじめて見る単語も多かった。衝撃を受けた。
 引用されている文献も専門的であり高レベルである。これは書き手が勉強しているうちにどんどん視点視野が広くなっていったのだろうし、それを導きサポートした指導者の力を感じる。
 この点に関してやや違和感があるのは、ある文献に依拠しすぎているのではないかということである。例えば「女性器切除」についての先進国フェミニストへの反批判の部分は生硬であり一方的なように思われる。もちろん自分たちの論が「唯一の正解ではない」とはしがきに断り書きはあるのだが。

 最近フェミニズムとかジェンダー論にアレルギーがなくなりつつあるように思われる。その流れを本書にも顕著に見ることができて、頼もしい限りである。(巳)
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