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ジュリスト1384号「特集 家族法改正―婚姻・親子法を中心に」有斐閣 2009年9月1日

 2001年1月,民法及び民事訴訟法研究者により,民法改正を抽象的に議論するだけではなく具体的な形で改正案を示すこと,長期的・包括的視野から将来に備えた案を示すことを共通の理解として,民法改正委員会が立ち上げられた。その中間的な成果は、「<特別座談会>家族法の改正に向けて(上)(下)−民法改正委員会の議論の現状」(ジュリスト1307号、1308号)で公表されたが、その後,第2次家族法作業部会が設けられ,検討を踏まえた論稿が掲載されている。1996年2月の民法改正要綱から13年以上経た今も,夫婦・親子に関する法の改正の見通しが立っていない現状において,具体的な改正案を作成し提案をされるという取り組みは、意欲的である。しかし,作業部会内においても,全員一致の統一案を作成することは困難であるとのことであり,各人の見解の違いが伺える。

  以下の通り、収録されている。
1検討の経緯―「民法改正委員会家族法作業部会」について  中田裕康
2婚姻法・離婚法                             大村敦志
 夫婦の財産関係を中心として検討している。
 まず,法定財産制は,個人の自由と婚姻の共同性の調和の実現の観点から,潜在的共有 制に疑問を呈しつつ,後得財産分配制(婚姻継続中は別産としつつ,婚姻解消時には,夫婦が婚姻中に獲得した財産(所得)は夫婦の協力によって獲得されたものと考え,その清算(平準化)を図る。)にすべきであるとする。後得財産分配制においては,離婚・死別に関わらず,まず夫婦の財産関係の清算を行う。それに伴って財産分与は補充的なものになる。また,配偶者相続分も適正にすべきであるという。
3実子法                                    窪田充見
 現行の民法が実親子関係の存否に明確な規律を欠いているとし,新たに母子関係と父子関係の存否に関する規律として実親子法を整備する必要があるとする。実親子の整備にあたっては,現行法及び判例等によって形成されている現在の法律状態を尊重することを,基本的指針とすべきであるとした上で,「推定されない嫡出子」「嫡出推定の及ばない子」をめぐる規律を民法の条項で対応するようにする。また,生殖補助医療にも,実親子法が対応できるよう新たな規定を提案する。
4養子法                                  床谷文雄
 成年養子と未成年養子の目的的分離を強めるべきとし,未成年養子については,縁組も離縁も全て家庭裁判所の許可を要するものとする等,規制を強化すべきとする。さらに,現状利用が乏しい特別養子縁組について,特別養子となる者の年齢の引き上げ等要件の緩和を立案する。
5親権法                                  水野紀子
 嫡出でない子と離婚後の場合,現在は単独親権であるが,共同親権を提案している。なお,離婚後の共同親権を認めるものの,現行法とのかい離が大きいこと等から,婚姻中とは一線を画し,離婚を機に親権行使の態様について定めるものとする。また,別居・離婚後に親権を停止させることができるとの条文を入れ,DVや児童虐待等があった場合に利用できるものとする。面接交渉について権利性を高める条文を置く。親権行使について協議が整わないときは,家庭裁判所が定めるとし,紛争に対応する手段を設けるべきとする。児童虐待など不適切な親権行使には,実効的な制約,監督手段を設けるとする。
6婚姻外カップルの関係                         山下純司
 婚姻外カップル(内縁,事実婚のほか,同性カップルなど)の関係に法的効果をどのように認めていくかについての論稿である。
 イングランド法の婚姻外カップルの扱いと近時の改正提案を概観し,イングランドのほかドイツ,フランスの制度を比較した上,日本でも婚姻外カップルの関係について,新たな制度を構築する必要があるとする。
7親子の養育関係                          久保野恵美子
 戦後家族法学において,親による子の養育がどのように考えられていたかを,我妻栄と中川善之助の考え方に差異がある点に着目しながら,概観する。我妻は,家族を夫婦と未成熟子からなる団体を割れないものとして捉える傾向があり,中川は,家族を個人の集まりと捉える傾向がある。この考え方の違いから,養子縁組,親権,扶養に対する解釈に相違が現れる。家族を団体としてみる考え方に込められたものと,その限界を見極めることが,課題であるとまとめている。

 なお、2の、夫婦の財産部分(財産分与、婚姻費用、相続)はフランス法等を参考に提案されている。論理的には非常にきちんとしていて、この通りだとすっきりすることは理解できるが、日本のこれまでの実務が到達した良い点、証拠から主張を認定する常道、などとの乖離も感じる。実際には、(1)婚姻前財産の証明は、婚姻期間が長ければできないのが普通(例えば古い通帳を残していない)、銀行の調査回答は過去10年分まで、(2)婚姻費用はなるべく破綻原因の紛争と切り離すことによってようやくスリムな調停・審判に移行し迅速化がはかられてきた経過があるが、正当な理由の別居か否かを結論に反映させるならば、再び婚姻費用事件を擬似離婚訴訟化させ逆行し、裁判所にも当事者にも負担が大きくなるのでは、(3)貞操義務の明文化については、破綻原因として今でも貞操義務違反の重さが突出し(有責配偶者とは、貞操義務違反者に限定するに近いような判例)、暴力、暴言、自分中心なその他の思いやりのない行為が「性格の不一致」に落とされてしまう傾向があるのに、これだけを明文化するのはどうかetc、種々、疑問点は残った。十分な議論をお願いしたい。
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