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わがまま読書 独断と偏見に満ちたこむずかしくない読書案内です。教科書からマンガまで。
井上荒野『静子の日常』中央公論新社 2009年

静子はフィットネスクラブの水泳クラブに毎週2回通う(水中ウオークでなくてスイミング)70歳を過ぎた妖精のようなおばあちゃんである。妖精といったのはすみれ色の水着を着ているかわいいおばあちゃんだからだけではない。
同居している息子の出会い系サイトで知り合った女性との遊びをスン止めして息子夫婦の危機を回避し、孫の片思いを応援し、水泳クラブでの噂話を沈静化する。それもちょっとした魔法をつかって誰にもわからないように傷つかないように静かに。そんなことができるのは単なる「老人力」ではない。静子が夫の浮気も経験した修羅をくぐっているし、いまだに消えない恋の火を秘密に抱えているからだ。
平凡な日常生活の中に潜む怖さを描いて初期の庄野潤三を思わせ、男と女の心のあやをすくいとって向田邦子のようだ。庄野といい向田といい、知らない人のほうが多いだろうなあ。でもこれは私の最大のほめ言葉。(巳)
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